薬剤師の転職は厳しい!?転職事情と選択肢と成功ポイント

薬剤師の転職環境はコロナ禍に見舞われた2020年も、まだまだ引っ張りだこの状況です。だからといって、安易な転職はご法度です。勤務場所によって必要なスキルは違ってきますし、転職理由も様々です。

やみくもに転職しても、また同じような理由で転職を繰り返すことになりかねません。今回は薬剤師の転職事情を把握したうえで、転職を成功させるポイントを紹介します。

薬剤師の有効求人倍率の推移

2020年8月の「医師・薬剤師等」の有効求人倍率によると、2.10倍と高くなっています。

さすがに、10年前の有効求人倍率6倍というような状況ではなくなりましたが、薬剤師の人手不足が叫ばれ始めてから10年以上が経った現在も解決されていません。

全体の有効求人倍率が0.95倍ですから、他の業種に比べて、いかに求人数が多いかがわかります。医師・薬剤師の需給は、2033年頃に均衡するといわれていますが、まだまだ転職希望者に有利な環境にあります。

薬剤師の勤務先には、薬局、病院や診療所などの医療施設、介護保険施設、大学、医薬品関係企業、衛生行政機関または保健衛生施設が挙げられます。

なかでも薬局に務めている薬剤師がもっとも多く厚生労働省によると平成30年末現在で18万415人に上ります。これは全体の58%にあたり、前回調査比で4.8%増えています。増加率もトップです。

次に多いのが医療施設で、全体の19%にあたる5万9,956人が勤務しています。診療所における勤務者は前回調査比で1.6%減っていますが、病院の薬剤師は3.3%増えました。

大学に勤務する薬剤師は、4.3%増えて5,263人となっており、ここまでが前回の調査と比べて薬剤師が増えた職場となります。

一方、薬剤師が減っている職場が、医薬品関係企業と衛生行政機関または保健衛生施設です。前者は4.2%減の4万1,303人、後者が2.2%減の6,661人でした。

また、介護保険施設の薬剤師数の調査は平成30年から始まり、前回比は不明ですが、勤務者は全体の0.3%にあたる832人となっています。

ちなみに、薬剤師の人口10万対数は190.1人となっており、都道府県別に見ると、1位が徳島県、2位が東京都、3位が兵庫県となりました。逆に、少ないのは沖縄県、福井県、青森県となっています。

薬剤師の転職に多い職場

薬剤師の転職に多い職場は、基本的に「ドラッグストア」「調剤薬局」「病院」「企業」の4つになります。しかし、薬剤師とひとくちにいっても、職場によって携わる仕事は様々です。

したがって、転職して自分が何をしたいのか明確な意思を持たないと、せっかく転職できたのに、また転職を考えるような状況になってしまいます。

転職する理由と、転職後の展望をしっかり分析し、それに噛み合う職場を探すようにしましょう。ここでは、ドラッグストア、調剤薬局、病院、企業の4つについて、それぞれの仕事内容を紹介しますので参考にしてください。

ドラッグストア

ドラッグストアは、大手のチェーン店が全国展開している店がほとんどです。そこでの薬剤師の仕事は、まず医療用の「第一類医薬品」や「要指導医薬品」といったOTC医薬品の説明、服薬指導になります。

ドラッグストアは店舗によって違いますが、様々な症状に適したOTC医薬品があるので、お客様の症状や体質、アレルギーの有無をヒアリングし、それに合ったOTC医薬品を選んで販売します。それにより、OTC医薬品に関して幅広い知識を身につけることができます。

一般のお客様のほとんどは薬の知識が豊富ではないので、専門知識をもった薬剤師の役割は非常に大きいです。

また、ドラッグストアでは医薬品のほかにも、化粧品や日用品、健康食品、サプリメントに至るまで、多種多様な商品を扱っています。そのため、医薬品の知識だけでなく、それら商品群の知識も必要になります。

お客様から健康相談を受けて、症状によっては健康食品やサプリメントを勧める場合もあります。

他にも、店によってはレジ打ちや在庫管理、商品の品出しから陳列まで行うケースもみられます。薬剤師としての業務を超えて、店舗売り上げに直接関与することになるので、目に見える成果によってやりがいを感じることもできます。

このように仕事が多岐にわたるため、一般的に、ドラッグストアは病院や調剤薬局より給与が高い傾向があるといえます。それに伴い、パートの時給相場も高いです。

調剤薬局

調剤薬局には、総合病院など規模の大きい病院の近くにある薬局と、小規模の病院や診療所、クリニックの近くにある薬局があります。前者を門前薬局、後者をマンツーマン薬局と呼ぶこともあります。

門前薬局の場合、あらゆる診療科の処方箋を扱うので、処方内容も多岐にわたります。大量の処方箋を処理することから、調剤時間を短縮するために最新設備を導入している薬局も多く、スキルアップをしやすい環境が整っています。

しかし、大量の処方箋をこなさなければならず、非常に忙しい職場でもあります。とくに、外来の多い午前中は仕事に忙殺されることになり、お客様一人ひとりに時間をかけていられません。服薬指導も、要点をまとめて短く済ますなど、調剤以外のスキルも問われることになります。

マンツーマン薬局は、主に近くにある病院や診療所からの処方箋が多いので、その医療機関によっては処方が偏る傾向にあります。そのため、専門性を高めたい薬剤師には勉強しやすい環境といえるでしょう。

また、地域に密着していることが多く、特定のお客様とのコミュニケーション能力が必要です。東日本大震災のときには、常備薬を失った患者が溢れました。

そのとき、地域密着のマンツーマン薬局の薬剤師が、患者たちからヒアリングを行い、個々人それぞれに薬を調剤することで、多くの人たちを救ったのです。このように、地域ならではの薬剤師の役割は大きく、それは調剤薬局で働く薬剤師のやりがいにつながります。

病院

調剤薬局と違って、医師から降りてくる処方箋の処方だけでなく、医師に処方提案をする場合もあります。大きな総合病院ともなると、多くの診療科の処方を自ら考える立場になるため、とにかく薬学の知識量が必要です。

新しい薬を採用する機会も多くなるので、医療の進歩や高度化を肌で感じながらスキルアップを図れます。また、各病棟間の連携やチームワークも重要となり、より患者と向き合う機会も多いので、コミュニケーション能力は必須です。

それ以外にも、多いときには1日100枚単位の処方箋の調剤と監査を行うこともあり、調剤のスピードアップも不可欠です。また、病院によっては、薬剤師でも夜勤や当直があり、急性期病院で患者の受け入れやベッド数が多ければ多くなるほど、忙しさは増していきます。

関連記事:病院薬剤師とは?仕事のやりがい・向いている人の特徴・転職方法まとめ

企業

薬剤師が企業で働く場合、その仕事内容はおおむね7つの職種に分けられます。

・医薬品を取り扱う最高責任者である管理薬剤師
・営業を担うMR(Medical Representatives)
・新薬開発に携わる研究開発職
・知見や臨床開発モニターの業務をおこなうCRC(治験コーディネーター)
・厚生労働省へ新薬の承認申請をおこなう
・MRへの薬学講習などをおこなうDI(Drug Information)
・従業員専用の医療施設に在中する企業内診療所の薬剤師

いずれの職種も、専門性の高い知識です。また、管理薬剤師には経験も必要になりますし、MRなら営業職としてビジネススキルが求められます。薬事は書類作成以外の業務を兼任することがほとんどで、研究開発職は博士号の取得が条件になる場合もあります。

また、担当部署、または企業自体の業績によっては、入社後に希望しない職種へ異動することもあるので、それらへの耐性を踏まえて熟慮することが大切です。

薬剤師の転職に多い5つの理由

実際に転職をした薬剤師、転職を考えている薬剤師の転職理由は、結構似たり寄ったりです。給与の不満、スキルアップのため、環境の変化のため、仕事内容が激務だから、人間関係といったところが多いです。

給与を上げるため

給与の不満に多いのは、多忙の割に合わない、昇給の機会が少ないという理由が多くみられます。例えばドラッグストアの場合、薬剤師としての仕事以外の業務を兼任することが多く、他の職場と比較すればその分給与は高めですが、実績が表面化しにくいので昇給の機会は少なくなります。

なかには、サービス残業を強いられて体調を崩す人もおり、待遇面の不満で転職を考える人もいます。

スキルアップのため

職場によっては取り扱っている医薬品が偏ることがあるため、より専門的な知識、調剤スキルを求めて転職を考える人が多いです。日々同じような医薬品の調剤だけでは、調剤経験を積むことは難しいでしょう。

また、調剤薬局によって整備しているシステムも大きく違い、最新の設備を擁する職場に魅力を感じる人もいます。なかには、さらに知識欲が高まると、新薬の研究開発に携わりたいと、製薬会社に転職する人もいます。

引越しや結婚のため

薬剤師は女性の数が多く(全体の約61.3%)、既婚者の場合、配偶者の転勤により転職を余儀なくされるケースも多々見られます。

しかし妊娠や育児のために退職し、その後に再就職を志す薬剤師は多いです。また、子供の成長に伴って、より自分の生活スタイルに合った職場を探す人もいます。

激務のため

とくに営業時間が長いドラッグストアでは、人手不足が重なると、一人が背負い込む仕事量が必然と増えてきます。なかには、繁忙期になると中休みもないまま、拘束時間が10時間になるというケースもありました。

病院に勤務する薬剤師も、かなりの激務であることが多いです。大きな総合病院になると処方箋の量が桁違いで、朝から夕方まで調剤に忙殺されるなど日常茶飯事です。調剤中にも呼び出しがかかれば病棟に移動し、服薬指導や電子カルテの記載の業務をこなします。

また、薬剤師はセミナーや講演会、学会に参加したり、職場によってはカンファレンスに出席したりすることもあり、調剤だけが仕事ではありません。こうした激務に耐えきれず、転職を考える薬剤師は意外と多くいます。

人間関係

これは薬剤師に関わらず、あらゆる職場で起こり得る問題です。いったん人間関係が破綻してしまうと、修復はなかなか難しくなります。薬剤師の場合、小さなコミュニティが職場になることが多いので、人間関係に悩む人がいます。

また、病院にもよりますが、旧態依然の病院になると、薬剤師の立場が低く見られるケースもあります。そのため、意見や主張が通りづらくなり、肩身の狭い立場に追いやられることになります。こうなると、もはや個人の努力でどうなるものでもなく、転職を決意する人は多いです。

関連記事:在宅薬剤師とは?やりがい・仕事内容・年収・求人情報まとめ

転職回数の多い薬剤師の評価

転職回数が多いと、転職にどのような影響を及ぼすかは気になるところです。結論からいうと、やはり転職回数が多すぎると、不利になるケースが見られます。

ここでは、一般的に薬剤師の転職回数がどれくらいなのか、転職回数が多い場合、どのようなデメリットが生じるのか、どうやって払拭するのかを紹介していきます。

薬剤師の平均転職回数

ココファーマの調査によると、薬剤師の平均転職回数は1.96回です。ただし、性別や年齢、職場によっても転職回数は変わってきますので「転職を2回以上しているから多いと思われる」わけではありません。

薬剤師の転職回数が不利になるケース

転職回数が多いと判断されるのは、職場によって変わります。ドラッグストアや調剤薬局では、転職回数が多くても採用されることが多いです。しかし、製薬会社の企業では、転職回数の多さがデメリットとなります。

そもそも転職回数の多さは、採用担当者に不安を与えます。採用する側は、当然長く働いて戦力になってもらいたいと思っています。

転職回数が多いと「採用してもすぐに辞めてしまうかもしれない」「長続きしないのは本人に問題があるのではないか」と、書類審査の段階でふるい落とされる可能性があります。さらには、キャリアに一貫性がなくなりやすく、その点でも不利になることがあります。

転職回数の多さは、採用に悪影響を及ぼしかねないので、それを払拭しなければなりません。そのためには、ネガティブな転職理由をポジティブなものに変えることが大切です。

たとえば、人間関係が理由であっても、前の職場のネガティブな話をするのではなく「個人の力をチームワークに活かしたい」など、前向きな転職理由に変換します。

関連記事:薬剤師は休みがない?薬剤師が土日休みの職場へ転職する方法

薬剤師が転職する時は転職サイトの利用がおすすめ

薬剤師が転職を成功させるためには薬剤師専門転職サイト『ファルマスタッフ』から求人を探すことをおすすめします。

他の求人サイトを通して自分で応募することも可能ですが、たくさんの求人情報から希望に合った転職先を選ぶことは難しいです。

しかし、転職サイトから求人を探すことで、プロのキャリアアドバイザーがあなただけにおすすめする転職先を紹介してくれます。転職先の内部事情を教えてくれるだけでなく、転職活動に伴う志望理由の添削や面接対策を無料でサポートしてくれます。

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