2022年も残すところ1カ月になりました。人材ビジネス業界(求人広告・人材紹介・人材派遣・HR系)は、この1年間どんな労働問題・時事ネタ・人事関連ニュースが注目されたのか業界動向・業界分析・トレンドキーワードの振り返りをまとめました。
2022年の雇用・就職・労働ニュースや話題の振り返り
22年3月、ヘアカット専門店QBHOUSEの理美容師の契約形態が問題視されました。本社が理美容師を雇用するのではなく、本社と業務委託契約を結ぶ個人事業主が理美容師を雇用する形を取っていることが判明。現場では社会保険未加入・残業代不払い・有給取得不可などの深刻な労務問題が生じていましたが、直接の契約関係にない本社は、雇用責任を免れる仕組みになっており、業務請負契約を濫用した使用者責任の回避だとして問題視されました。
22年3月、スキマ時間バイトのマッチングサービス「タイミー」はコンプライアンス規程違反を理由に元株式会社ディー・エヌ・エー代表取締役社長でタイミー取締役COOの守安功氏の退任を発表しました。臨時取締役会において辞任勧告を決議と、就任からわずか半年の出来事でした。
22年4月、牛丼チェーン「吉野家」の伊東正明常務取締役企画本部長が早稲田大学の社会人向け講座で「生娘シャブ漬け戦略」と発言したことが問題視されました。吉野家ホールディングスは「人権・ジェンダー問題の観点から到底容認することの出来ない不適切な言動があった」として伊東常務の解任に至りました。
22年4月、株式会社DYMが就職エージェント事業のアフィリエイトにおいて「就職率96%」「書類選考なしで面接」と謳っていましたが、就職率は15%程度だったことや書類選考が必要な企業があったことが判明。そのほかにも数々の嘘が発覚し、景品表示法違反(優良誤認)で消費者庁から措置命令を出されました。
22年5月、吉野家ホールディングスは吉野家の採用説明会に予約した大学生に対して、外国籍であると勝手に判断し、参加を拒否していたことが応募者の告発で発覚しました。吉野家は採用サイトに「組織の活性化を目的に、外国籍社員の積極的な登用を続けています」と明記していましたが、対外的なアピールと実際の採用活動が異なっていたことが発覚しました。
22年5月、ピクシブ株式会社の執行役員がトランスジェンダー従業員に対して性的指向や性自認について侮辱される「SOGIハラスメント」を受けたなどとして、約550万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴されたことが話題になりました。性的経験の有無の質問や「キャバ嬢にしか見えない」「ハプニングバー通いしてそうな顔だ」などの発言、原告の陰部に顔を押し当てられる等の行為をしたとのことです。
22年6月、牛丼チェーン・すき家は、2022年1月に名古屋市で働くアルバイトの女性が、1人で働く「ワンオペ」中に倒れ、死亡したことを明らかにしました。すき家は、午前5時~午前9時のワンオペ勤務の廃止を発表。すき家のワンオペ勤務は2014年にも問題となっていましたが、一部店舗で続いていました。
22年7月、株式会社Synergy Career(シナジーキャリア)が運営する就活情報サイト「就活の教科書」にて「底辺の職業ランキング」と題した記事に批判が殺到しました。職業差別的な内容だったことや、介護・看護・保育・物流など、エッセンシャルワーカーが多数ランクインしていたことも合わさって炎上に至りました。
22年11月、人気求人サイト「インディード」を閲覧し、人気洋菓子店『マダムシンコ』運営の株式会社カウカウフードシステムに応募した。サイトには「月給35万~50万円(残業代を含む)」と待遇情報が掲載されていた。しかし、3カ月間の試用期間中は25万円だった月給が、期間終了以降は約17万円に減ったという。減額理由の説明がなく、退職することを決め、今回の労働審判となった。運営会社側は答弁書で、求人サイトの広告が実態と異なっていたことを認めたうえで、「インディードの広告は閲覧者を増やすためで、給与額を高く表示しただけに過ぎない」と反論。「雇用契約の労働条件にあたらない」として争う姿勢を示していた。しかし、結果的に大阪地裁が約90万円の支払いを命じた。
外国人労働者が過去最高を記録
厚生労働省は、日本国内の外国人労働者数は前年同期比で約9万5千人増加の約182万人(22年10月時点)と過去最高を更新したことを発表。国籍別では、ベトナムが46万人、第2位は中国38万人、第3位フィリピン20万人。
在留資格別では「専門的・技術的分野の在留資格」が48万人で、前年比8万5千人増加。特定活動が7万3千人で、前年比7千人の増加。一方で技能実習34万人で、前年比8千人の減少。資格外活動のうち留学は26万人で、前年比9千人の減少。
大型倒産・上場廃止・事業再生・国内リストラ
22年に倒産した上場企業は1社です。バイオベンチャーのテラ株式会社(東証スタンダード)は、コロナ治療薬の開発をしていましたが、インサイダー取引など金融商品取引法違反のトラブルが発生。第三者割当増資などの資金調達がままならなくなり、資金繰りに行き詰まって事業継続を断念しました。
業績悪化による上場廃止は2社です。テラに加えて、マニュアル制作専門会社のグレイステクノロジー株式会社(元・東証1部)は、特別調査委員会の調査にて重大な経営者不正・会計不正が発見されたことで、2月に上場廃止となりました。売上の前倒しなど、トップダウンで架空計上が横行しており、長年にわたり粉飾決算を行っていました。
上場企業で事業再生を申請したのは1社です。大手ジェネリック医薬品メーカーの日医工株式会社(東証プライム)です。医薬品は品質不正による業務停止命令や米国子会社の事業失敗による多額の損失計上で経営危機になり、債務超過に陥りました。
2022年に希望退職募集を開示した上場企業は38社。100名以上の応募者数が明らかになったのは8社。人員削減策のなかで最も人数が多かったのは富士通の3000名でした。
日本たばこ産業(JT)も2800名(発表2021年)、アステラス製薬(発表2021年)の650名と続きます。その他に、日本ペイント、平和、フジクラも100名以上の大量募集になります。ジャノメ(旧:蛇の目ミシン工業)も300名の募集を発表しています。
2022年の人材系の新規上場会社一覧
02月04日 株式会社セイファート(美容業に関する広告求人サービス、紹介及び派遣サービス)
02月09日 株式会社ライトワークス(人材管理プラットフォーム)
03月28日 株式会社メンタルヘルステクノロジーズ(システム開発保守専門の人材派遣事業)
09月29日 ポーターズ株式会社(人材マッチングサービス「PORTERS」運営)
09月30日 株式会社グッピーズ(医療・福祉・介護系求人サイト「グッピー」運営)
12月16日 オープンワーク株式会社(社員クチコミ情報サイト「OpenWork」運営)
まとめ
ユーキャン新語・流行語大賞では「村上様」が年間大賞に選ばれました。その他にキーウ、きつねダンス、国葬儀、宗教2世、知らんけどが選ばれています。北京冬季五輪やサッカーワールドカップなどスポーツイベントも豊富でした。
2022年も引き続き新型コロナウイルスが猛威をふるっており、三年目を迎えました。国際的にはロシア軍によるウクライナ侵攻が話題になりました。2023年も人材業界の出来事を追っていきたいと思います。
参照:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20230127_02.html
参照:https://www.fukeiki.com/2023/01/2022-restructuring-list.html