定年までひとつの企業に勤めあげる「終身雇用」の概念が崩れつつある現代。40歳を過ぎてから転職を考える人も少なくありません。しかし、転職事情としては35歳が限界説と言われているように、42歳の転職は手遅れなのでしょうか?
本記事では42歳の転職事情をはじめ、失敗する人や成功する人の特徴、転職時の注意点を詳しく解説します。42歳で転職を考えている方、迷っている方は参考にしてみてください。
目次
42歳の転職は遅い?
厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」の調査によると、42歳の転職入職率は以下の通りです。
40~44歳のグラフを見ると男性は5.7%、女性は9.6%と共に一桁台です。もっとも高い19歳以下の数値から見ていくと、転職入職率は段々下がってきているのが分かります。
とくに男性に関しては29歳を境に大幅に減少しています。男性の場合は結婚して家庭を持つことで転職を検討する機会が減少するのかもしれません。反対に女性は結婚や出産などライフスタイルの変化が転職のきっかけになると考えられます。
表からも分かるように42歳の転職は決して難しいとは言い切れないでしょう。ただし、転職は年齢を重ねるごとに厳しい現状があると理解しておく必要があります。
42歳の転職が遅いと言われている理由
42歳の転職はそこまで悲観的になる必要はありません。ただし、42歳という年齢だからこそのハードルも存在します。ここでは42歳の転職が遅いと言われている理由について解説します。
年齢制限が設けられている求人がある
42歳の転職が遅いと言われるのは、求人に年齢制限が設けられているパターンがあるためです。一般的に求人では年齢制限を設けるのは禁止されています。しかし、企業が長期的なキャリア形成を望んでいる場合など、例外的に年齢制限を設けることが認められているのです。
このような求人は決して珍しいものではありません。また、年齢制限も35歳以下と明記してあるため、42歳は年齢の段階で弾かれてしまう恐れがあります。
経験やスキルが重視される
働き盛りといわれる42歳の転職は経験やスキルが重視されます。
反対の言い方をすれば、42歳で未経験から始められる求人は少ないということです。
今までの会社ではどんなポジションで、どんな成果を残したのかなど、面接では経験やスキルについて聞かれます。「成果は残せませんでしたが、一生懸命頑張りました」と学生のような言い訳は通用しないので気を付けましょう。
希望を満たせる求人が少ない
希望を満たせる求人が少ないのも理由のひとつです。
例えば20代なら自分だけの食い扶持分なら何とかなるでしょう。30代でも今後の頑張りで昇給が望めます。しかし42歳の場合は家庭を持っている方も多く、子どもがいれば進学費用などの大きな出費がかかるケースもあります。
現在の給与は今までの積み重ねがあってこそ。それと同じ給与水準を中途採用に求めるのは少し無理があるかもしれません。多少の年収ダウンは覚悟する必要があります。
教育体制が整っていない
企業で導入している教育体制は、若手や未経験向けを想定していることがほとんどです。つまり、キャリアの長い42歳に関しては即戦力としての活躍が期待されています。そのため、未経験やスキル不足で手厚いサポートを受けられるのは厳しいと思った方がいいかもしれません。
また、教育担当が20代や30代の場合、互いにやりにくさを感じてしまうものです。このような理由からも42歳での転職は遅いと言われています。
42歳の転職で求められるスキル
42歳の転職は経験やスキルなどが重視されます。
具体的にどのようなスキルがあると重宝されるのでしょうか。以下では、42歳の転職で求められるスキルを解説します。
即戦力
まずは即戦力です。「イチから頑張ります」「何でも吸収して覚えていきます」といったポテンシャルが評価されるのは20代もしくは30代まで。
40歳を超えると「経験を活かしたい」「即戦力として御社の役に立ちたい」というアピールの方が効果的です。経験やスキルについても、職務経歴書で実績や業務内容を細かく記入し、面接でも具体的に伝えるのが採用への近道となります。
マネジメント能力
マネジメント能力の高い人材は高く評価されます。
リーダーや管理職のポジションが不足している場合、給与面で優遇される確率も上がるかもしれません。
新人教育担当の経験やチームリーダーに抜擢されたことは積極的にアピールしましょう。ただし、過度なアピールは要注意。偉そうな発言や自慢話、上から目線と受け止められるような態度は自ら評価を下げてしまいます。
コミュニケーション能力
42歳の転職ではコミュニケーション能力も重要視されるスキルです。
経験が豊富であったり、高いスキルを保有したりしていても、コミュニケーション能力が欠けていては十分な力が発揮できなくなってしまいます。
企業が見ているのは社風に合っているかどうかです。入社後は周りと円滑にコミュニケーションを図れるかも評価基準のひとつ。人と接するのが好きなことや誰とでもすぐに打ち解けられるなど自分の強みは積極的に伝えていきましょう。
柔軟性
若手と違うのは人生経験の豊富さです。
「40歳は不惑の年」とも言われているように、適切な判断能力や柔軟性も求められます。若い内は「どうしていいか分からない」が通用しますが、42歳にもなって迷ってばかりだと企業も困ります。
入社後は自分でどんどん仕事を獲得して、さらにスキルを磨くくらいの勢いで転職活動に挑みましょう。面接でも頼りがいのある人だとプラス評価に働きやすくなります。
学習意欲
学習意欲の高さも大事なスキルのひとつです。
社会は時代の変化とともに確実に変わっていきます。その変化に応じて新しい知識を取り入れる意欲も面接で評価されます。
「今までこのやり方だったから変えなくていい」「前の会社ではこうだった」と過去の方法に固執する人を企業は積極的に雇おうとはしないでしょう。若手がイチから吸収する素直さが強みとなるなら、42歳は新しい知識をアップデートする意欲が強みとなります。
42歳の転職で失敗する人の特徴
42歳の転職で失敗する人には共通の特徴が見られます。自分に当てはまるかどうかチェックしてみましょう。ここの特徴を抑えておくことで、就活の失敗を回避できます。
理想が高すぎる
給与や福利厚生などは大事なポイントですが、理想が高すぎると面接官に敬遠されてしまいます。もちろん、給与に見合った経験やスキルがあれば話は別です。交渉する余地は十分にあるといえるでしょう。
面接官が嫌がるのは「これくらいの給料は当然」「休日出勤は絶対にしたくない」と自分の理想を頑なに崩そうとしない人です。
面接対策を行っていない
面接対策を行っていないと失敗する確率が上がります。選考に面接は必要不可欠です。面接の結果が採用に大きく関わるといっても過言ではありません。
面接で大きなマイナス点となるのは前職の不満を伝えてしまうこと。人間関係や業務内容など不満があるのは分かりますが、それをそのまま伝えるのは逆効果です。ネガティブな印象を持たれないよう、退職理由はポジティブな印象に置き換えるなど、十分な対策を行いましょう。
情報収集が不十分
情報収集が不十分なのも転職に失敗する理由のひとつです。年収や福利厚生だけを見て転職した結果、社風が合わないと早期退職につながるケースは少なくありません。これは企業が悪いのではなく、自分の情報収集が不十分であった場合に生じるケースです。
思っていたのと違ったとならないよう、企業ホームページや在籍している社員の声も参考に転職活動を進めましょう。
42歳の転職で成功する人の特徴
反対に42歳の転職で成功する人はどのような特徴があるのでしょうか。失敗する人に共通の特徴があるように、成功する人にも共通する特徴が見られます。以下では、42歳の転職で成功する人の特徴を解説します。
自分の市場価値を把握している
転職で成功を収める人は自分の市場価値を把握しています。42歳で初めて転職をする場合、自分の市場価値を知らない人は少なくありません。そうなると条件交渉で失敗したり、反対に自分の能力を安売りしたりと、うまくいかない恐れがあります。
自分が希望する業界や業種でどのくらいの価値があるのか調べてから転職活動を行いましょう。
自己分析ができている
自己分析ができている人は転職活動もスムーズに進みます。自己分析とは自分の長所や短所、これまでの経歴やスキルなどのことをいいます。また、今後のキャリアの目標や課題点を明確にすることも大切です。
自分を客観的に見られる人は企業からも高く評価されるでしょう。自己分析をしっかり行っておくことで面接にも臆せず臨めます。
経験を活かせる業界に的を絞っている
42歳からの転職は若い人と比べて求人数は少なくなる傾向にあります。しかし、転職で成功する人は、経験を活かせる業界に的を絞っているため、求人数で一喜一憂することはありません。
長年培ってきたスキルや専門知識を活かせる職種を選択しているので、転職活動に無駄がなくスムーズです。求人が少ないからと諦めるのではなく、42歳の強みを活かせる求人を探してみましょう。
在職中に転職活動を行っている
転職活動はなるべく在職中に行うのが大切です。若いときは引く手あまたでも、40歳を超えれば転職活動は難航しがちです。確かに今の会社を辞めて転職活動に集中した方が効率がいいかもしれません。
しかし、今の会社を辞めるということは収入が途絶えるのを意味しています。収入が途絶えた状態では精神的なゆとりも減り、余裕を持って転職活動ができなくなってしまうでしょう。転職を成功させている人は、現在のキャリアも大切にできるゆとりがあります。
42歳の転職での注意点
年齢が上がれば上がるほど、転職への不安が募ります。とはいえ、採用率アップのコツさえ掴めていれば、42歳の転職もそこまで難しいものではありません。以下では、42歳の転職での注意点を解説します。
年齢制限のない企業を選ぶ
まずは40歳以上の採用に積極的な企業を選ぶことです。「年齢不問」と求人でアピールしている企業もチェックしてみましょう。
転職=若手のイメージですが、すべての企業が若手を欲しているわけではありません。中には即戦力となる中高年の採用に力を入れている企業もあります。このような企業を選べば、必ず自分に合った職場が見つかります。
転職エージェントを活用する
転職市場に詳しいプロの力を借りるのもひとつの手段です。転職エージェントにはキャリアコンサルタントが在籍しており、採用に関する手厚いサポートを受けられます。
市場にはない非公開求人を扱っているエージェントなら競争率も低くなり、自分にとって有利になることもあります。履歴書の書き方や自己PRの添削、面接対策も行ってくれるので、自分の希望に合う転職エージェントを活用してみましょう。
キャリアの棚卸をする
キャリアの棚卸も大事なポイントです。これまでの経験を見直していくと、自分でも気付かなかった特技や強みを発見できます。中でも実績を残した経験があれば強いアピールポイントとなるでしょう。
履歴書や職務経歴書、自己PRはキャリアの棚卸を行ってからの方が、書くべきことがスムーズにまとまります。
優先順位を付ける
転職の条件を整理すると、希望を満たす企業を見つけやすくなります。そのためには、妥協できる点と妥協できない点を書き出してみましょう。
年収や転勤の有無、残業時間、就業場所などさまざまな条件を洗いだして整理します。自分の中で優先順位を明確にしておけば、転職後のミスマッチも防げます。
社会人マナーに気を配る
40歳を超えると社会人マナーもつい疎かになってしまうもの。気心知れた社内の人間や長く付き合っている外部の人間には通じるかもしれませんが、転職活動においてはNGです。社会経験が長いからこそ、企業は意外と厳しくチェックしています。
また、社会人マナーは時代と共に少しずつ変化しています。心配な点があれば動画や本を使って最新のマナーを身に付けておきましょう。近年ではZoom面接を取り入れる企業も増えているため、Web面接のマナーも事前に学んでおくと安心です。
42歳の転職は厳しいが実現不可能ではない
42歳の転職は遅いという意見もありますが、実現不可能なことではありません。年齢制限が設けられていたり、即戦力を期待されていたりと不利に思うことはあるものの、そこまで心配する必要はないでしょう。
転職時には年齢制限のない企業を探す、キャリアの棚卸を行うといった対策が重要です。その上で心配なことは転職エージェントを活用してみるのもいいかもしれません。
42歳での転職は厳しい側面もあるため、転職活動が長期化する恐れもあります。そのような点も考慮しつつ、自分が満足できる企業を探していきましょう。