転職は若い人が有利といった風潮があり、35歳限界説という言葉もあるため、30代後半以上の人の中には転職を踏みとどまっている人も少なくありません。
しかし、38歳での転職が遅いとは一概に言えません。社会人経験が豊富な38歳だからこそ、20代や30代前半にはない強みやメリットもあります。
そこで本記事では38歳の転職事情を確認した上で、38歳で転職するメリット、転職に失敗する人・成功する人の違い、注意点などを解説していきます。
目次
38歳の転職事情
まずは38歳の方を取り巻く転職事情について解説します。厚生労働省が発表した「令和3年雇用動向調査結果」をもとに、38歳の転職の状況を紹介します。
出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」(転職入職者の状況)
30代後半の転職入職率(転職者数の割合)は、10代や20代、30代前半と比較して低くなっています。
38歳を含めた35歳~39歳の男性が転職する割合は約8%、女性は約10%にとどまり、若年層と比較して低い状況です。
また、40代後半までは年齢が進むにつれて転職入職率は下がり続けるのが男女共通の傾向となっています。
つまり、38歳での転職は「20代や30代前半よりは厳しい」「40代・50代よりは転職しやすい」といえます。
未経験の職種への転職は難しい
関東の有効求人倍率は、38歳が含まれる年齢でも平均して1.0以上です。
専門的・技術的職業の倍率は高く、転職しやすいと考えられます。また、これ以外の倍率が高い業界も同様です。
一方で転職者の人気が高い業界は倍率が低く、とくに未経験の職種に就くことは難しいといえるでしょう。
年齢 | 全職業( )内は比率 | 専門的・ 技術的職業 ( )内は比率 |
34歳以下 | 1.63(1.00) | 2.07(1.00) |
35〜44歳 | 1.30(0.80) | 1.84(0.89) |
参考:厚生労働省「関東労働市場圏有効求人・有効求職年齢別バランスシート(2023年3月)」
38歳スキルなしだと転職が難しくなる理由
38歳でスキルなしだと転職は難しいと言われています。具体的に4つの理由を解説します。
即戦力採用が多い
即戦力採用が多くなるのも、38歳の転職が難しくなる理由です。企業が30代後半の人材を採用する場合、実績やスキルを重視する傾向にあります。
実績・スキルが乏しい場合は、企業の求める人物像から外れるため、採用される可能性が低くなるのです。即戦力としての活躍が見込めない場合、転職に成功するのは難しいでしょう。
20代と比較されてしまう
38歳になると20代と比較して応募できる求人数が少なくなるため、転職が難しくなります。
中途採用は「即戦力」か「ポテンシャル」のどちらかで採用がおこなわれることが一般的です。
38歳でスキルなしの場合はポテンシャルでの採用を期待したいところですが、ポテンシャルを優先した採用では20代が対象となり、30代以上が対象になることはほとんどありません。
なぜなら企業は育成しやすく人材や長期間働いてくれる人材を求める傾向にあるためです。
求人数が少ないと応募倍率も高くなるため、38歳でスキルなしだと転職が難しくなるのです。
転職して年収が下がる可能性がある
転職して年収が下がる可能性があるのも、38歳の転職を難しくする理由です。
キャリアアップのための転職を除き、30代後半で転職する場合、現職よりも待遇が劣るケースがあります。転職者に配偶者や家族がいる場合、年収ダウンを受け入れにくくなるため、転職先の選択肢が狭まります。
38歳は応募できる企業が少なくなるため、転職に成功する確率は下がってしまうでしょう。
転職に一時的な年収ダウンはつきものです。転職先で実績を残せば、おのずと年収もアップするので、まずは転職することにフォーカスしましょう。
出産・子育てが影響する
38歳の転職では、出産や子育てが影響して転職が難しくなることがあります。
特に38歳女性の場合、結婚や出産を予定・経験している方も多く、子どもがいれば保育園へのお迎えや体調不良時の早退・休職などが必要になるケースもあります。
待遇や勤務地、子どもに対する臨機応変な対応が可能な職場など、すべての条件を満たす転職先を見つけるのは容易ではないため、転職が難しくなるのです。
38歳の転職を成功させる4つのポイント
38歳で転職を決意したのであれば、是が非でも転職を成功させたいですよね。
ここでは、38歳の転職を成功させるための4つのポイントを解説します。
転職理由をはっきりさせる
38歳で転職を成功させるためには、転職理由をはっきりさせる必要があります。
転職理由を明確にすることで、転職の軸を定められるためです。軸をもとに転職活動することで、自分に合った転職先を見つけやすくなるでしょう。
環境や社風、キャリアアップなど、何のために転職するのかをはっきりさせて、転職活動をスムーズに進めていくことが大切です。
自分の経歴・スキルを棚卸してまとめる
38歳で転職を成功させるには、自分の経歴やスキルの棚卸が必要です。
経歴やスキルを洗い出すことで、自分の強みを明確にできるためです。先述した転職の軸に、自分の強みを加えれば、自分に合った転職先はさらに見つけやすくなります。
また、自分の強みを言語化できるため、面接官にわかりやすく伝えられるようになる他、経歴を振り返ることでこれまで気が付なかった強みが見つかる可能性もあります。転職活動する前の自己分析として、経歴やスキルをまとめておきましょう。
面接対策を行う
38歳の転職を成功させるためには、面接対策を怠ってはいけません。
面接時の受け答えによって、あなたのイメージが大きく左右されるためです。あなたの経歴や実績が、企業が求める人物像に見合っていても、面接官にうまく伝えられなければマイナスの印象を与える恐れがあります。
既出のとおり、経歴やスキルを棚卸した後に、面接でどのように伝えればいいのがアウトプットできるように準備しましょう。また、どのような質問をされるのか想定し、その回答を考えておくことも大切です。入念な面接対策は、あなたの転職を成功へと導くでしょう。
離職前に転職活動する
38歳で転職を成功させるには、前職を離職する前に転職活動することが重要です。
転職活動前に離職してしまうと、収入が途絶えてしまうためです。転職活動はいつ終わるかわかりません。場合によっては想定以上に時間がかかることもあります。
転職が決まらず、経済的に苦しくなると、生活のために転職先を選ばなければならなくなり、自分が希望した転職とはかけ離れた結果になる恐れがあります。転職活動は離職前に完結させることが鉄則であることを覚えておきましょう。
38歳で転職するメリット
30代後半はそれ以下の年齢と比べると転職のハードルが高いと言えます。しかし、20代や30代前半ではなく、38歳だからこそ転職において得られるメリットもあります。
以下で38歳が転職するメリットについてそれぞれ解説します。
年収アップの可能性がある
企業は35歳以上の転職者に対して即戦力や若い世代のマネジメントをしてもらうことを想定しています。
そのため、過去の経験や高いスキルが評価されれば、現職以上の年収での採用を見込める可能性もあります。
また、転職では社会人としての経験や実績が重視されるため、学生時代には高嶺の花だった企業に入社するチャンスでもあります。
大学時代の就職活動で憧れていた企業から内定を得られなかった人も、中途採用では社会人としてのスキルや経験が評価されて内定を得られることもあります。
転職による年収アップを目指したい人は自分の経験やスキルを活かせる企業の他、大手企業や売上が右肩上がりの企業を受けることをおすすめします。
キャリアアップのチャンスがある
新たに始める新規事業や新規プロジェクトのマネジメント職を外部から迎え入れるために、中途採用の求人を出している企業もあります。
こうした求人を出している企業は社内に新規ビジネスに関する知識のある人材がいない状態であるため、外部から招き入れようと考えているケースがよくあります。
例えば、大企業で特定の業務に長年にわたって携わってきた人であれば、転職先において新規事業のプロジェクトリーダーなど、企業の今後を左右するようなプロジェクトにおける重要なポジションを任せてもらえるようなことも珍しくありません。
現在の職場では昇進のチャンスがない人や昇進を見込みにくい人は、自分のスキルを評価してくれる企業を見つけることでキャリアアップを実現できることもあるでしょう。
40代や50代よりも有利な年齢
本来は求人募集において年齢制限は原則NGですが、実際には「35歳以下」「39歳まで」といった年齢制限を設けている企業も少なくありません。
30代後半になると年齢制限に引っかかりやすく、年齢を理由に応募することさえもできない企業も出てきてしまいます。そうなると、スキルや経験を活かして昇給・昇進の機会を得るチャンスも少なくなります。
また、アプローチできる企業の数が少なければ、内定を得られる可能性もそれだけ下がってしまいます。企業の求人における年齢制限は35歳と39歳が一つの区切りにされていることが多いため、38歳であれば40代や50代よりも年齢制限に引っかかりにくいです。
38歳の転職に成功する人の5つの特徴
38歳の転職が難しい理由を解説しましたが、一方で38歳での転職に成功している人もいます。
ここでは、38歳の転職に成功する人の特徴を解説します。
転職理由が明確
転職理由が明確な場合は、38歳でも転職に成功しやすくなります。
何のために転職するのかはっきりしていれば、転職先に求める条件を絞りやすくなり、応募先の取捨選択ができることから、転職活動をスムーズに進められるためです。
また、転職理由が確立されていれば、採用企業に対して何をどのようにアピールすればいいかわかりやすくなる他、転職先企業とのミスマッチも防げるため、転職後の定着率も高くなります。
スキル・実績が豊富
前職で培ったスキルや実績が豊富な場合、38歳でも転職に成功しやすいです。
30代以上の転職では、即戦力として活躍できる人材が求められるためです。転職先で活かせるスキルや実績があれば、選考に有利になるため、転職にも成功しやすくなります。
また、スキル・実績がない方でも、過去の経歴を細かく振り返ればアピールできることがあるかもしれません。それでも不安な場合は、現職でスキルを磨き、経験を積んでから転職することも検討しましょう。
企業が求める人物像を理解している
企業が求める人物像を理解している人なら、38歳でも転職に成功しやすくなります。企業が求める人物像を理解すると、自分が求められる企業を選択しやすくなるためです。
効率的に転職活動を進められる他、企業に自分の長所をアピールしやすくなります。転職先を探す場合は、どのような人材が求められているのか、求人情報から読み取ることが重要です。
マネジメントスキルがある
マネジメントスキルがある人は、38歳でも転職に成功しやすいです。
マネジメントスキルとは、部下を育成しながらチームや部署を牽引する能力のことを言います。30代後半では、転職先でマネジメントを求められるケースが多いため、前職でマネジメントの経験や実績があれば選考は有利になるでしょう。
過去のマネジメント経験は具体的な数字で表した実績と、取り組んだ内容の詳細をアピールできるように準備しておくことが大切です。
また、リーダーとしてのマネジメント経験がない場合でも、前職で新入社員や後輩社員の教育に携わった経験があれば、その内容をまとめておくといいでしょう。
コミュニケーションスキルが高い
コミュニケーションスキルが高ければ、38歳でも転職に成功しやすくなります。
新しい環境に適応しやすく、仕事に慣れるまでのスピードが早いためです。転職において重要なポイントの1つが適応力です。30代後半ともなると転職先に年下の上司や先輩ができるケースもあり、周りに気を遣わせてしまう恐れがあります。
コミュニケーションスキルが高ければ、新しい同僚ともなじみやすく、業務を進めやすいため、企業側も採用しやすいでしょう。また、営業職や接客を伴う仕事では、コミュニケーション能力が求められるため、内定を獲得できる可能性が高くなります。
38歳の転職に失敗する人の3つの特徴
38歳で転職に成功する人がいれば、残念ながら失敗する人もいます。
ここでは、38歳の転職に失敗する人の特徴を3つ解説します。
転職回数が多すぎる
転職回数が多すぎる場合は、38歳の転職に失敗しやすいでしょう。
企業が採用後の早期退職を懸念する恐れがあるためです。特に、短期間に転職を繰り返している場合(ジョブホッパー)や、職種・業種を頻繁に変えている場合、採用担当者に良くない印象を与えます。
転職回数が多い人は、転職理由について詳しく質問される可能性が高いです。面接に臨む際は、過去の転職理由について担当者が納得できる明確な理由を説明することが大切です。
転職に正当な理由があれば、採用される可能性が高まるでしょう。
適応力が低い
適応力が低い場合も、38歳の転職に失敗しやすいといえます。
先述のとおり、適応力は転職における重要な要素の1つです。職場や仕事になじむのが早いほど、業務が進めやすくなります。
逆に適応力が低ければ、業務の進行や同僚とのコミュニケーションがスムーズに進まず、職場に悪影響を及ぼす恐れがあります。30代後半での転職では、新しい環境に柔軟に対応できるスキルも大切です。
職歴にブランクがある
職歴にブランクがある場合も、38歳の転職に失敗しやすいです。
無職期間が長い場合やアルバイト期間が長い場合、または働いていなかった正当な理由がない場合、責任感に欠ける人物という印象を与える可能性があり、企業側は採用をためらう恐れがあります。
体調不良や家庭の事情など、明確な理由がある場合は、面接官に必ず伝えましょう
38歳男性が転職で注意すべきこと
転職は慎重に行うべきですが、年代や性別ごとに注意点が存在します。
ここでは、38歳の男性が転職で注意すべきことを解説します。
転職先に対する希望条件を高くしすぎない
38歳の男性の転職では、転職先に対して高すぎる希望条件を設定してはいけません。
転職先の選択肢が少なくなってしまうためです。転職先に対して理想の条件を求めることは自由ですが、すべての条件をマッチした企業がどれくらいあるのか把握しておかなければなりません。
求める条件が高すぎると、応募できる企業も少なくなり、転職が実現する可能性が低くなってしまいます。希望する条件のうち、自分が譲れない条件を明確にして、応募できる企業の選択肢を広げることが大切です。
転職活動前に家族の了承を得る
家庭を持つ38歳の男性が転職する場合は、転職活動前に必ず家族の了承を得ましょう。
家族の了承なしに転職活動すると、夫婦や子どもとの信頼関係に影響するためです。収入が減少したり、住居が変わったりするケースがある他、退職してから転職するまでに様々な手続きが発生することがあります。
家庭を持つ男性が転職する場合、本人だけではなく家族にも影響を及ぼすことになります。もし、転職について事前に話さなかった場合、家族は信頼されていないと感じるかもしれません。
転職は家族の協力なしには成し得ませんので、まずは妻や子どもに話をしてから転職活動を始めましょう。
38歳女性が転職で注意すべきこと
男性だけではなく女性ならではの注意点も存在します。
ここでは、38歳の女性が転職で注意すべきことを解説します。
子どもがいると転職しにくくなる恐れがある
子どもがいる場合、転職しにくくなるケースがある点に注意しましょう。子育て中には送迎による退勤や残業に対応できなくなる場合があり、企業側が採用を懸念する可能性があるためです。
ただし、企業によって対応が異なるため、家庭と仕事の両立が可能かどうか、実際にそのように働く女性社員がいるか、確認しましょう。
出産休暇・育児休暇を取得できるかどうか確認する
これからの人生で出産・育児の予定がある場合は、出産・育児休暇を取得できるか確認してください。企業によっては、出産・育児休暇を採用していないためです。
転職する企業のせいでライフプランが頓挫してしまわないよう、女性が働きやすい職場や福利厚生が整った職場を選ぶよう心がけましょう。
まとめ
38歳での転職は難しいと考えられていますが、転職理由が明確で、スキル・実績が豊富であれば転職に成功する可能性は十分にあります。
一方で、転職回数が多い場合や、正社員としてのブランクが長い場合は、転職が難しくなる恐れがあります。
38歳で転職を考えているなら、自分のスキルや経歴を洗い出し、即戦力として活躍できる企業をメインに転職活動を展開していくといいでしょう。
転職は一つの大きな決断ですが、適切な知識と準備を持つことで、その道は必ず開けます。この記事があなたの転職活動を成功に導く一助となることを願っています。