ハローワークにブラック企業や嘘の求人詐欺が多い3つの理由

ハローワークにブラック企業や嘘の求人詐欺が多い3つの理由

ハローワーク(公共職業安定所)に掲載されている求人の中には、実態と異なる内容が記載されている「ブラック求人」や「求人詐欺」と呼ばれるものが存在することが、近年問題視されています。

本来であれば、国の機関が紹介する求人には一定の信頼性があると考えられがちです。しかし、現場の実態としては、誤解を招く表現や、事実と異なる労働条件が記載された求人票に応募してしまい、後悔する求職者も少なくありません。

本記事では、なぜハローワークにブラック企業や虚偽記載の求人が多いのか、その背景となる3つの理由を解説し、求職者が自分自身を守るために知っておくべきポイントをお伝えします。

ハローワークとは

ハローワーク(公共職業安定所)とは、国(厚生労働省)が管轄している職業紹介事業を行う行政機関です。

無料で職業紹介や就職支援のサービスを行っており、全国の都道府県に必ずあります。東京都では19か所に設置されています。

仕事の斡旋以外にも失業保険給付など助成金支給や公共職業訓練の斡旋もおこなっています。インターネットからも求人情報を検索可能です。

便利な行政機関であるはずのハローワークですが、実際の利用者のクチコミには「嘘だらけ」「嘘ばっかり」「実際と違う」「騙された」といった評判が多いです。これには三つの理由があります。

関連記事:嘘・オトリ・ダミー求人とは?見極め方と対処方法

ブラック企業が多い理由1:無料で求人掲載できる

ハローワークの求人にブラック企業が紛れやすい最大の理由は「求人掲載が無料であること」です。

ハローワークでは、企業が求人を出す際に審査や掲載費用が一切かからないため、どんな規模の会社でも簡単に求人を掲載できます。この仕組みにより、労働環境が整っていない中小企業や零細企業でも気軽に求人票を出すことが可能です。

その結果、「本気で採用したい」わけではなく、採用意欲がさほど高くない企業、いわゆる“とりあえず掲載”の求人が目立つ傾向にあります。いわば「来たらラッキー」というスタンスの企業です。

民間の転職サイト(例:リクナビNEXT、マイナビ転職)では、数十万円以上の費用が必要になるため、本気で採用に力を入れている企業が多い一方で、ハローワークは財務的に余裕のない企業や、採用を急いでいない企業も多く集まってきます。

その中には「カラ求人(=採用予定がないのに掲載している求人)」も含まれ、求職者にとっては無駄足になるリスクもあります。

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ハローワークでは企業の本気度を見極めるのが難しいのが現実です。応募前に企業の採用姿勢を知りたいなら、エージェント経由での応募がおすすめです。転職エージェントは、求人票に書かれていない「採用の背景」や「実際にどんな人を求めているのか」といった企業の本音も把握しています。
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ブラック企業が多い理由2:虚偽の求人票でも罰則がない

ハローワークの求人票に嘘が書かれていても、企業側に罰則(罰金)が課されることは基本的にありません。

厚生労働省の公式見解では、ハローワークの求人票は「労働条件の目安」であり、労働契約上の法的効力を持つわけではないと明言されています。つまり、誇大広告や誤認を誘う求人情報が掲載されていたとしても、罰金や処罰を受けるわけではないのです。

この制度の隙を突くように、実際の条件とは異なる好条件を記載して、応募者を集めようとする企業も存在します。

たとえば「本当は未経験者は月給20万円なのに、求人票には一律25万円とだけ書く」といったケースも珍しくありません。こうした企業は、面接や内定のタイミングで「実は…」と条件を下げて説明してきます。

求職者が「もう他の求人に応募していないし…」と断りづらい心理を狙った、非常に悪質な手法です。求人票に嘘が書かれても、是正指導程度で済むため、ブラック企業にとっては“リスクゼロ”で虚偽記載ができてしまうのです。

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求人票に書かれている条件だけを鵜呑みにせず、面接時には「実際の待遇や仕事内容」についてしっかり確認することをおすすめします。不明点があれば遠慮せず質問しましょう。

関連記事:ハローワークはやめたほうがいいは本当?やばい求人の特徴と見極め方

ブラック企業が多い理由3:求人情報が極めて薄い

ハローワークの求人票は、他の転職サイトと比べて記載情報が圧倒的に少なく、企業の実態が見えにくい構造になっています。

企業の事業内容や職場環境についての記載はわずか2~3行。写真や動画、社員インタビューといった情報もなく、働くイメージを持つことが困難です。

一方で、マイナビ転職やタウンワークなどの民間求人サイトでは、プロのライターによる詳細な原稿、職場の写真、福利厚生の具体的な内容まで豊富に掲載されており、求職者が自分に合う企業かどうかを判断しやすくなっています。

さらに、ハローワークには「試用期間あり」とだけ記載しておいて、実際は非正規雇用で契約更新も不透明だったという報告もあります。こうした求人に騙されて入社し、早期離職につながってしまったという声も少なくありません。

中小・零細企業が中心のハローワーク求人では、企業ホームページすら持っていないケースも多く、「聞いたことのない会社」ばかりが並ぶことも。求職者からすれば、事前に企業の内情や風土を判断できず、まるで“ギャンブル”のような転職活動になってしまうのが実情です。

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求人票だけで職場の雰囲気や働き方を判断するのはとても難しいです。実際に「想像と違った」と早期離職に至る方も少なくありません。転職エージェントなら、企業の社風や職場のリアルな様子、定着率なども含めて丁寧に教えてくれます。
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嘘の求人票も?ハローワークのトラブル相談は年間1万件超

ハローワークでは毎年数千件の相談や苦情が寄せられており、「求人内容と実際の労働条件が違う」というトラブルが後を絶ちません。これは、ハローワークの求人にブラック企業や誇大広告が含まれているリスクを物語っています。

厚生労働省の統計によれば、以下のように年度別の苦情・申出の件数が報告されています。件数は、全体の苦情件数における「求人票に書かれている内容が実際と違っている」といった相談・苦情件数の合計です。

  • 2015年(平成27年度):10,937件
  • 2016年(平成28年度):9,299件
  • 2017年(平成29年度):8,507件
  • 2018年(平成30年度):6,811件
  • 2019年(令和元年度):5,778件

実際、厚生労働省の統計によると、2019年には約6千件を超える苦情や相談が発生。これはあくまで通報された件数であり、報告されていないケースも含めると、ハローワーク求人票の信頼性には疑問が残ります。

ブラック企業への取り締まりは強化されたが…

ハローワーク側も対策を強化しており、2016年3月からは労基署から年2回以上是正指導を受けた企業は、新卒求人を掲載できないルールを導入しました。

しかし、これはあくまで一部の制限に過ぎず、制度そのものが完全に機能しているとは言い切れません。現状では、悪質なブラック企業や虚偽求人を完全に排除できているとはいえないのが実態です。

ハローワークで嘘の求人を見つけたら?

もしも「求人票の内容が事実と違う」「詐欺まがいの条件提示をされた」などのケースに遭遇した場合は、厚生労働省の「ハローワーク求人ホットライン」または最寄りのハローワーク窓口に相談・通報しましょう。

さらに悪質なケースでは、退職を申し出ると「訴えるぞ」と脅してくる企業もあるため、一人で悩まず、早めに専門機関に相談することが重要です。

厚生労働省:ハローワークの求人票と実際が異なる旨の申し出等について
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/member/hotline.html

求人票だけを鵜呑みにしないためのチェックポイント

ハローワークの求人には、きちんとした企業もありますが、求人票の記載内容だけで判断するのは危険です。信頼できる情報を得るためには、以下のようなチェックを行いましょう。

  • 企業ホームページがあるか確認する
  • 「企業名+評判」「代表者名+口コミ」などで検索してみる
  • 面接時に仕事内容・給与・休日・福利厚生を細かく確認する
  • 労働条件通知書(雇用契約書)を必ず受け取る

まとめ

ハローワークの求人は、すべてがブラック企業ではありませんが、慎重に見極める必要があるのは確かです。

無料で掲載できる仕組みゆえ、信頼性が高いとは言い切れない求人票も多く含まれているため、求人詐欺や誤情報を鵜呑みにせず、自分で確認する力が求められます。

転職活動を成功させるには、ハローワークだけでなく、口コミサイト、企業HP、SNSなど複数の情報源を併用することが重要です。

自分の身を守るためにも、「疑って調べる」姿勢を忘れずに行動しましょう。

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ABOUT US
秋場亮一株式会社リクエストエージェント代表取締役
明治大学経営学部卒業後、ディップ株式会社に新卒入社。求人広告の法人営業に従事。2011年に転職し、成功報酬型求人サイトの立ち上げと事業成長に尽力。2016年に求人広告代理店を創業。企業の採用活動を支援しつつ、これまでの豊富な経験を活かし、就職・転職ノウハウを情報発信中。