人事にとって避けたいのが内定辞退ですが、もう一つ心配なのが内定後の「留年」です。母集団形成に苦労しながら面接し、本人から内定承諾をもらって安心していたら突然「留年しました」と連絡がくるかもしれません。留年確定した内定者に対する救済措置の対処法をまとめました。
留年の連絡は突然起きる
新卒採用における悲劇は内定者の大学生が留年確定したと報告されるときです。留年が確定するのは前期試験の結果が交付される9月か、後期試験後の3月です。上位校と呼ばれる早稲田大学や東京大学のほうが留年率が高いと言われています。授業やゼミナールが厳しいからか4年生になっても出席が多い人もいます。部活動の練習に熱中しすぎて授業に参加しなかったという強者も…。
一人のために就活サイトで再募集するのは費用対効果が悪いため、二次募集をおこなわない企業もいます。最近では新卒の人材紹介会社もあるので、「一人だけの採用」で一本釣りできる可能性も広まりました。しかし、縁あって内定になった優秀な人材を留年したからといって逃すのも大きな損失です。人事部としてどのような対応方法があるのでしょうか。代表的な対処法をご紹介したいと思います。
対処法①内定取り消し
一番多い対応が内定取り消しです。採用の条件が大卒としている以上は中退は認めないとして、内定取り消しをおこなうのは正しい対応とも言えます。求人サイトの募集要項では「大卒」「〇年〇月入社」を条件にしていると思いますし、内定通知書(採用通知書)にも入社時期が明記されているので、その基準に達していないので内定取り消しとする企業が多いです。
学生側も心変わりする可能性がありますので「内定は白紙になってしまいますが、よかったら来年またエントリーしてください」と伝える企業が一番多いでしょう。
対処法②内定維持したまま卒業を待つ
来年も入社する気があるなら内定を維持してあげるのも一つの方法です。単位とカリキュラム次第ですが、半年で卒業できる可能性があるため、4月入社には間に合わなくても9月入社できる可能性があります。明治大学商学部出身の山下智久さんも留年し、9月卒業したそうです。
ただし内定維持はあくまで企業側の好意なので、法的な強制力はありません。そのため別の企業に入社されてしまうリスクもあります。不安だからと言って「来年もうちに絶対に入社すると誓約書を書いてくれ」なんて言ってしまえば、ブラック企業と呼ばれてしまいますので注意してください。半年だけの留年の場合に多い救済措置です。
対処法③未卒のまま入社してもらう
厳密には2つのパターンがあります。中退して入社してもらう方法と、大学生のまま入社してもらう方法です。ただし、仮に本人から「中退(退学)するから入社させてくれ」と条件を出してきても、個人の経歴に傷がついてしまうため、おススメはできません。
「授業料が払えないので中退します」なら致し方ありませんが、正社員として入社すると学生納付特例制度の適用外の可能性や、将来的なキャリアプランの視点から基本的には卒業したほうがいいことを諭すのが親切な対応だと思います。
「働きながら授業に出席していい」とする企業もいます。所属学部や足りていない単位数次第ですが、土日や夜間で単位を取得できる可能性もあります。多少は支障が出るとはいえ大幅な影響を与えない可能性もあります。数単位レベルであれば週一日か半日だけで済みます。
他の方法に最初はアルバイトとして入社してもらい、大学を卒業したら正社員に昇格する条件にした企業もいます。新卒研修だけは同期と一緒に学んでもらい、その後は週〇日だけアルバイトとして働いてもらったそうです。飲食店やアパレル業界に多い救済措置です。
学生編:学生は正直に対応すべき問題
留年した学生は嘘をつかないことです。近年では多くの会社が卒業証明書の提出を求めません。必要書類は入社承諾書と契約書ぐらいです。たまに身元保証書や健康診断書がある程度ですね。そのため仮に中退したとしてもバレる可能性は低いと言えます。しかし、入社にあたって学歴詐称(経歴詐称)が発覚した場合は最悪、解雇の対象となってしまいます。
将来的に転職する際にも中退がネックになってしまいます。もしかしたら転職先では卒業証明書が必要かもしれませんし、嘘をつきとおすとしたら、バックグラウンドチェック(人事調査・採用調査)をおこなう企業には絶対に入社できません。安易に中退せず、半年から1年間我慢して卒業したほうがメリットがあると思います。
留年が確定してしまったら意気消沈していると思いますが、もしも第一志望で決まっているなら留年しただけで自分から諦めないようにしましょう。今回紹介しているように救済措置を導入している企業もあるため、まずは人事部に正直に状況説明とお詫びの謝罪をして、今後について相談してほしいと思います。
お詫びの連絡はメールではなく、企業に直接訪問して伝えましょう。ただし最初の連絡として「留年しました。ごめんなさい。ついては一度お詫びと経緯の説明に訪問させてください。」とメールは送るのは正しい対応です。仮に内定取り消しにあっても就職活動を再チャレンジできるチャンスが増えたと前向きに考えましょう!
まとめ
新卒採用を長年経験していると何回かは留年問題を経験するのではないでしょうか。縁あって内定に至っているわけですから定型的に判断するのではなく、ケースバイケースで柔軟に対応してほしいと思います。