人材紹介や人材派遣など様々なビジネスモデルがある人材業界ですが、その中でもメジャーな業態である求人広告営業の仕事についてまとめました。
今回は実際に求人広告営業を10年以上経験しているベテランが仕事内容や、その魅力について徹底的に詳しく説明させていただきます。
目次
求人広告営業とは
求人広告営業とは、採用に困っている企業に広告を使って採用をお手伝いする営業を意味します。一般的な広告営業と違い、人材にフォーカスとした営業になり、効果を求められるのが特徴。
会社ごとに企画営業職、人材コンサルタント、採用コンサルサント、採用プランナー、採用コンサルティング営業などバラエティに富んだ職種名で募集されていますが、すべて広告営業職を意味します。
求人広告は転職系(リクナビネクスト、マイナビ転職、エン転職)、就職系(リクナビ、マイナビ、キャリタス就活)、アルバイト系(バイトル、タウンワーク、マイナビバイト、フロムエー、イーアイデム)に大別できます。
求人広告営業が取り扱っている求人メディアはほぼインターネットメディアです。フリーペーパー(無料求人誌)はタウンワーク(リクルート)やドーモ(アルバイトタイムス)または地方しか生き残っていません。
求人広告営業の大手企業
求人広告系の大手企業ではリクルート、マイナビ、パーソルキャリア、ディップ、エン・ジャパン、ネオキャリア、クイック、アイデム、エスエムエス、キャリアデザインセンターが挙げられます。各社とも全国に拠点を展開し、海外支店も珍しくありません。
大手企業になると人材紹介や人材派遣もおこなっており、社内に複数の事業部または子会社や関連会社が何十社もあったりします。リクルートのように代理店を活用している企業もあります。
各社とも営業部署の雰囲気は体育会系になります。20代中心の会社が多く、課長も20代後半から30代前半になるため、自然と活気にあふれた大学のサークルに近い雰囲気になります。良くも悪くも学生ノリと言えるかもしれません。役職者にも「さん」で呼ぶ文化があり、フランクな社風がほとんどです。
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求人広告営業の仕事内容・流れ
最初に担当エリアが決められ、その担当エリアに対して営業をかけます。
営業リスト(競合他社に広告出稿した企業のリスト)に対して営業電話または飛び込み営業をします。テレアポはトークスクリプト(台本)が準備されており、断り文句に対して営業トークを仕掛けます。
最近ではメールを活用したマーケティングオートメーションや、オンライン商談ツール内勤型営業(インサイドセールス)が注目されていますが、依然として営業電話にこだわる企業が多いです。インバウンドセールスは効率的ではあるものの、売上を上げやすいのはいまだにアウトバウンドセールス(営業電話)であるためです。
テレアポは求人広告営業の基本にして最大の難関です。決裁者に対して「提案させてほしい」と伝えなければいけませんが、話を聞いてくれる人はほぼいません。そもそも受付突破すら難しく、アポが取れなければひたすら電話をかけつづけなればいけず、相手から罵声を浴びせられることもあります。
相手も忙しい時間帯に営業をされるわけですから、いわゆる「ガチャ切り(話途中で電話を切られる行為)」されることが大半です。社名を言っただけで切られることも。
しかし、顧客から「うざい」「しつこい」と思われてからが求人広告営業のスタートです。担当エリア内で求人広告を出している企業リストは限りがあるため「うざい」と思われても何度も電話をかけ続けるしかありません。メンタルが弱い人はこの時点で脱落します。
アポがとれれば提案になります。顧客の広告予算や採用人数をヒアリングしつつ、採用難易度に合わせて最適なプランを提案します。顧客によってはデモ求人原稿も一緒に提案します。受注したら原稿制作や写真撮影(動画撮影)に取り掛かります。
日中は営業活動に終始し、夕方から夜にかけてメール対応、既存顧客対応(原稿修正含む)、提案書作成、社内会議、翌日の行動確認、になります。そのためどうしても残業が多くなりがちです。帰宅後に自宅で作業したり、土日に仕事をしなければ追いつかないレベルです。
求人広告営業の魅力・楽しさ・やりがい
採用が成功した時はやりがいを感じます。顧客とダイレクトに接するため「ありがとう!おかげで助かったよ!」と直接御礼を言われることも多く、やりがいを実感できます。また自分が書いた求人広告で採用したスタッフが活躍している現場をみたときは感慨深い気持ちになります。
自分が担当したクライアントが、採用を拡大して急成長を採用という側面からサポートするのは求人広告営業の最大の醍醐味と言えるでしょう。負けず嫌いで競争意識の高い人は、売上達成に喜びを感じられると思います。
月次ごとにノルマ達成者を表彰する会社もあり、モチベーションの源泉になります。一生懸命頑張って結果を評価されるのは嬉しいですよね。結果を出せば20代のうちからマネジメント経験をできるのも長所。
求人広告営業のノルマ・厳しさ
仕事はきついです。売れないと地獄です。人格を否定されます。売上目標は当然ありますが、キツイのが毎日の行動目標。アポ獲得数が目標になりがちですが、簡単ではありません。
毎月、毎週、毎日のノルマを課されるため、ノルマに追われる日々になりがちです。社内で売上ランキングを毎日発表する会社もあり、男性・女性関係なくストレス耐性は必要不可欠です。
求人広告営業はテレアポがきつい
テレアポで100件電話して3件新規アポが取れれば優秀です。朝から晩まで電話をかけ続けても、1件もアポがとれなければ商談の機会もないので「楽しい」と思える場面もありません。テレアポが「楽しい」と思っている営業はほとんどおらず、売れている人も「テレアポはツラい」と答える人が多いです。
1件もアポがとれなければ会議で「給料泥棒」「なにしに会社にきているの?」「契約とってくるまで帰ってくるな」と詰めてくる上司もいます。昨今はパワハラに敏感な時代ですので、さすがに暴力やあからさまな暴言はなくなってきましたが、精神的にタフでなければ続けることができない仕事です。
求人広告営業は効果がなければ顧客から怒られる
また求人広告の効果がなければクライアントから叱責されます。売り手市場の背景から医療介護系の採用は超難関と呼ばれ、求人広告だけで採用できるのはレアケースとなっています。採用できないとわかりつつもノルマ達成のために売らなければいけないこともあるかもしれませんね。
飲食業やサービス業など顧客によっては深夜または土日に電話をしてくる方もおり、プライベートとの両立が困難です。しかしながら、徹夜をするほどでもなく、基本的に遅くなっても終電で帰れる雰囲気はあります。
「人がスキ」「人の役に立ちたい」は甘い考え
「人がスキ」「人の役に立ちたい」といった志望動機で人材業界に入られる方がいますが、現実とのギャップの差がありすぎて、早期離職に繋がるケースが多いです。こうした考えを否定しませんが、厳しい現実も理解して取り組む必要があります。もし同じような志望動機なら「求人広告営業より人事よりの考え方」だと言えるでしょう。
求人広告営業の離職率
新卒の離職率は3年で30%と言われていますが、求人広告業界の新卒の離職率は1年で30%の会社も少なくありません。求人広告営業の仕事は「やりがい」はありますが、仕事の厳しさは甘く見ないほうがいいです。
仕事がハードなのが離職率が高い最大の理由ですが、新卒が夢見がちで入社するのも早期離職の原因だと考えられます。営業の厳しい面を全く就職説明会で伝えず、そのまま入社させてしまうため、現実と理想のギャップが激しすぎてメンタルがやられてしまう方も一定数います。
求人広告営業の年収・給与事情
平均年収の視点でいくと一般平均より高いです。大手企業のナンバーワンセールスになると年収1千万を超える人も。一方で、大幅未達または連続で未達が続くと減給も当然あります。営業のモチベーションを高めるためにインセンティブが支給されるのが一般的です。
上場企業であれば従業員の平均年収が公開されていますが当てになりません。なぜなら求人広告営業は営業手当やインセンティブがつくからです。ナビサイトで営業の初任給が公開されていますが、インセンティブ次第でピンキリです。
求人広告営業における広告代理店
求人広告営業の立場は直販と代理店の二つに分かれます。媒体社の営業を直販営業(直販部隊またはメーカー営業)と呼ばれます。自社の媒体について詳しいのが強みですが、自社の媒体しか扱えないのが弱みでもあります。代理店は会社名のブランドが弱いですが、複数の媒体を扱えるのがメリットです。
求人広告代理店は求人広告営業に特化した営業会社です。求人広告代理店は電通や博報堂とは全く違います。代理店は言ってしまえば下請け会社と同じ存在ですが、営業に特化しているからこそ精鋭が揃っており、伝説級の営業マンがいたりします。
代理店は営業実績に応じて一次代理店と二次代理店に分かれます。一次代理店になればマージン率(手数料)も上がる仕組みになります。一次代理店の中でも売上実績が高い企業をトップパートナーと呼ばれ、さらにマージン率も高くなります。リクルートトップパートナーレベルになると上場企業規模の売り上げを誇る企業もいます。
様々な媒体を取り扱っているのが代理店とされますが、実際には代理店ごとに得意な媒体が決まっており、大半が1つ(多くて3つ程度)の媒体をメインで売るスタイルです。ホームページや社長の経歴で何が得意なのか一目瞭然です。
求人広告営業で活躍する人材像
上司から毎日1時間説教されて「お前みたいな奴は会社の負債でしかないから早く辞めろ」と言われても全く気にせず元気よく出社できる方。
テレアポ先から「二度と電話をかけてくるな」と言われても翌日笑いながら電話を掛けられるメンタルの持ち主。が活躍できます。
運と才能に恵まれた営業でもない限り、好不調の波は絶対に起きます。そのときに楽観的且つポジティブ思考で、行動量をキープすれば活躍する人材になれます。
求人広告営業の志望動機の例文テンプレート
志望動機の例文テンプレート、雛形、フォーマット、サンプルをまとめました。
ビジネスにおいて『ヒト・モノ・カネ』が大事と言われている中で、私はヒトが最も大事だと考えています。なぜならヒトがいなければ企業活動すべてが始まらないからです。労働人口減少、売り手市場と呼ばれている中で、採用に苦戦している企業は数知れません。私は採用に困っている企業を求人広告で助ける仕事に魅力とやりがいを感じ、御社を志望させていただきました。
働き方改革・働き方の多様性が社会問題とされている中で、企業と人のマッチングの重要性は非常に高いと感じています。またこれからインターネットビジネスが成長産業であるのは間違いありません。それらが組み合わさっている人材インターネットビジネスで、求人広告営業の仕事にハードに取り組みたいと思い御社を志望させていただきました。
雇用を生み出している人材ビジネスに興味があり、その中でも求人サイトを運営している会社で働きたいと考えています。人材紹介や人材派遣を否定するつもりはありませんが、求人サイトはより沢山の人に影響を与えているという意味では一番優れていると感じます。世の中にたくさんある求人サイトの中でも、御社は月間〇万人が利用するほど社会的に認められているサービスであり、その中の一人として自分の実力を試してみたいと考えたのが私の志望動機です。
就職活動では人材業界を志望させていただきました。その中でも求人サイトを運営している会社に一番魅力を感じました。人材派遣や人材紹介業の仕組みを調べていくうちに、結果的に求人サイト(インターネット)で集客しなければ成り立たないことに気づきました。その意味では求人サイトが人材業界全体を支えていると言える点に魅力を感じた理由です。また御社が〇〇など様々な新規事業に取り組んでいるのも志望理由の一つです。将来的に私も新規事業に挑戦したいと考えており、新規事業にチャレンジできる環境が揃っている御社で学び成長していきたいと考えています。
媒体運営会社なら各社とも個性的なので、志望理由の作成には困らないはずです。
求人広告営業の就職・転職事情
各社とも大量採用する傾向にあるため就職難易度は高くありません。学歴も重要視されておらず、資格や経験も必要ないため、面接では営業適性(ストレス耐性やコミュニケーション能力)をアピールすれば合格しやすいです。
また人材系は企業理念(ミッション)や経営目標(ビジョン)を大切にしている傾向が強いため、カルチャーマッチしているかどうかが選考基準にもなっています。そのため「理念に共感しました」アピールは面接官ウケが良いです(一部の会社ではカルチャーマッチを最重要視しています)。
媒体社は新卒中心ですが、代理店なら第二新卒や中途枠でも通年募集している会社がほとんどです。さすがに30代になると営業未経験では不採用になりますが、第二新卒は新卒と同じく学歴やスキルが重視されておらず、バイタリティや営業適性が選考基準になります。大量離職するため、大量入社できる仕組みになっています。
マイナビやエン・ジャパンなど大手媒体社に中途入社したい場合は、転職エージェントを活用しましょう。こうした企業は大体が非公開求人で募集されているケースが多いです。広告営業職の転職なら、営業職に特化しているマイナビエージェントがおススメです。
求人広告営業からの転職・キャリアパス
求人広告営業を3年続けることができれば市場価値は高く、転職しやすいです。無形商材の法人営業は転職市場では評価されやすく、結果もだせていれば業界問わず転職できる可能性があります。
主なキャリアチェンジとしては法人営業、人事(採用担当)、インサイドセールス、カスタマーサクセスといった職種になります。特にベンチャー企業から重宝されます。転職先の選択肢が多いのは求人広告営業をするメリットの一つと言えます。
人事であれば求人広告営業と接する機会も多いことから「激務な環境で働ける人材」「ストレス耐性は保証されており営業に強い」というポジティブなイメージを持たれている方が多いです。営業実績や年齢にもよりますが、社内表彰を何度か受賞していれば、最終面接までは比較的スムーズと言えるかもしれません。
まとめ
楽しさもあり、厳しさもあるのが求人広告営業です。売り手市場が続く限りは、今後も求人広告業界は安泰だと言えます。
求人広告営業は様々な営業職の中でもキツイと言われますが、どんな仕事でも厳しさ・難しさはあります。求人広告営業の厳しさを理解した上で、チャレンジしてみてほしいと思います!