転職ドラフト提示年収問題の炎上騒動から考える転職サービスの課題

転職ドラフト提示年収問題の炎上騒動から考える転職サービスの課題

転職ドラフト経由での選考における提示年収の問題が、はてな匿名ダイアリーをきっかけに大きな話題となっています。

転職ドラフトは「最初に年収が提示される」という従来の転職サービスにはない特徴を持ち、多くのエンジニアや採用担当者から注目を集めています。しかし今回、提示年収と実際の内定条件に大きな差があったことから、サービスのルールや運営体制について疑問の声が上がりました。

本記事では、今回の炎上騒動の経緯を整理するとともに、転職ドラフト側・利用企業側それぞれの問題点について、求人広告・採用支援に携わる立場から考えてみたいと思います。

転職ドラフトとは

転職ドラフト(https://job-draft.jp/)とは株式会社リブセンス(代表取締役:村上太一)が2015年11月に始められたエンジニアに限定した転職イベントサイトです。

プロスポーツの選手獲得時に行われる「ドラフト会議」のように、ITエンジニアの採用をWebサイト上で公開入札(ドラフト指名)するサービスです。

転職ドラフトのコンセプトは最初に年収を提示されることです。通常は最終面接後に提示されることの多い年収ですが転職ドラフトは最初に提示されます。

登録者は年収と仕事内容を見た上で、選考に進むか判断できます。重要な判断軸である年収が最後に提示されるという転職市場の課題の解決をテーマにしており、すでに2回開催され、2016年10月に3回目が開催される予定です。

特徴的な機能はユーザーランキング機能です。どんなユーザーがどのくらいの年収で指名を受けたか分かるユーザーランキングという機能があり、指名数が多ければ「ゴッド級」「ウィザード級」「スター級」と表示されます。

企業にとっても書類選考が通過した会員ユーザーしかいないため、優秀なエンジニア層へアプロ―チできると期待されています。

第3回ドラフト参加企業

株式会社アイ・エム・ジェイ、ウンログ株式会社、株式会社 Aiming、Kaizen Platform, Inc.、株式会社クラウドワークス、株式会社GameWith、株式会社コロプラ、株式会社サイバーエージェント、サイボウズ株式会社、株式会社ジャストシステム、スタートトゥデイ工務店、スタディプラス株式会社、ソフトブレーン株式会社、SORABITO株式会社、株式会社DeNA、株式会社トレタ、株式会社ドリコム、株式会社ニジボックス、HEROZ株式会社、株式会社ビザスク、株式会社フリークアウト、株式会社フィードフォース、BASE株式会社、株式会社ペロリ、弁護士ドットコム株式会社、株式会社マネーフォワード、yahoo株式会社、株式会社ユーザベース、株式会社ラクーン、株式会社Lang-8、株式会社ロコパートナーズ、株式会社リブセンス (9/5時点確定企業31社)

転職ドラフト炎上の経緯

転職ドラフト経由でヤフーの内定を獲得したユーザーの告発

提示された金額が指名時の金額と大きく違っていて辞退することになった。

こんな事を書くと関係者からは余裕で特定されると思うが、それでも問題提起したかったので書く。

転職ドラフトという、企業がWebエンジニアのプロフィールや職務経歴書を見て年収付きで指名を出すというサービス(イベント)がある。

「今までの転職活動は選考の最終段階になって初めて年収を提示されるためミスマッチが起きやすい。転職ドラフトではリアルな年収が最初に分かりその上で選考に進むか判断出来る!」というエンジニア目線がウリらしい。

https://job-draft.jp/

面白そうだと思ったので登録してみたところ、大変有り難い事に500万~600万で6社ほどから指名を貰えた。

その中で興味のあった大手Y社の指名を承認し、面談で会社説明を聞いたあと改めて履歴書や経歴書を送りエントリーし、適性試験や数回の面接を経てとうとう内定を貰った。

中途でしかもドラフト経由なのにこんな新卒みたいな選考があるのかと思ったが、大手とはそういうものなのだろう。

ところが、内定通知と同時に提示された年収が想定していた額とかなり違っていた。

Y社からのドラフトでの指名額は550万で、転職ドラフトのルールでは指名額の9割以上を保証という事だったので、最悪でも495万以上のはずであると思っていた。

実際に提示された金額は4,288,000円、月給では268,000円。

人事担当者の説明では、この金額にみなし残業時間25時間分が付き実際には4,912,228円になる。

更に社員の月平均残業時間30時間の場合なら5,037,064円、参考までに月45時間残業した場合には5,411,608円になりますとの事。

わざわざ45時間残業した場合の金額まで細かく教えてくれるなんて、まるで「ね?これでほぼ指名時の金額になったでしょ?」と言われているような気がした。

※もちろん実際にそう言われたわけではない。

いやいやそれは転職ドラフトのルール違反ではないのか?と思い、転職ドラフトに問い合わせた。

すると、転職ドラフトからは「各社員一律に必ず支給される報酬は年収額に含めることができるという基準のため、みなし残業分が指名額に含まれているのはルール違反ではない」という回答が来た。

みなし残業分を含めても9割の495万に届いていない事のみ問題なのでそれは指摘しますとの事。

なるほど…そういうものなのか…?

つまり転職ドラフトとしてはたとえ600万(別途残業代を全額支給)という指名と600万(実際にはみなし残業45時間を含む)という指名が判別できずに並んでいたとしても問題ないという認識なのか。

「各社員一律に必ず支給される報酬」とは言っても、両者では実際に月45時間残業した場合の収入額は大きく異なるため、みなし残業制による残業手当というのは役職手当や住宅手当などとは全く性質が異なるものに思える。

これはみなし残業制を採用していない優良な企業にとって非常に不利な状態なのではないか。

(ちなみに「一律に必ず支給される報酬」というのが指針であるならば、提示額は標準的な評価だった場合の金額であり賞与について人事評価や事業部の予算によって基準額を下回る場合もあると説明されたのは問題がないのか)

Y社では私が提示されたものよりもう一つ上の役職になるとみなし残業時間が45時間になると説明されたので、一見かなり高額な年収で指名された方でも、9割以上ルールと合わせると実際には数百万単位で少ない基本年収の場合もあるという事になる。

Y社は第2回ドラフトで参加者493名中90名もの大量指名を出しており、大手企業がこのような形で他の企業と登録者のマッチング機会を失わせるような行為を行っているのはどうかと思う。

Y社の採用情報ページには手当の欄に「時間外勤務手当」としか記載されておらず、みなし残業制である事は確認出来なかった。

そもそもみなし残業手当を含めても550万を大きく下回っているし、1次面接でも2次面接でも希望年収について繰り返し聞かれ、「ドラフトで指名頂いた金額で問題ありません」と答えたのだから、その額より下回るのであればその時に何か言って欲しかった。

Y社のサービスや他の福利厚生などは魅力的で元々強く入社を希望していたので迷ったが、提示された額では現在よりもかなり収入が減ってしまうし、ここで受け入れてしまったら不満のあるやり方までも認めてしまう事になると思ったので、内定を辞退させて頂いた。

まさか転職ドラフトで金額が折り合わずに辞退する結果になるとは思わなかった。

最初から450万という指名額であったら、他の指名を優先したかもしれないし、その金額でも納得して採用に進んだかもしれないが、どちらにしてもこのような結果にならなかっただろう。

少し前だがNHKでこんな記事があった。(記事自体は消えているのでブクマページ)

http://b.hatena.ne.jp/entry/www3.nhk.or.jp/news/html/20160209/k10010403791000.html

こういうエントリもあった。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/uenishimitsuko/20160211-00054308/

額は違うものの上記でいう「見せかけ高給」と同じような事ではないのか。

というような内容を転職ドラフトに返信したところ、「再検討し、規定や表示を改めるべきでないかと話を進めております」と回答して頂いた。

いや、分かっている。

現状日本のWeb企業ではみなし残業制や裁量労働制が実質的な残業代削減施策として広く利用されていて、むしろやってない企業はほとんど存在していないとすら思える状態だ。

実際には転職ドラフトに参加している他の全ての企業もみなし残業制であるかもしれない。

だからY社や転職ドラフトのみに不満を持ってもあまり意味がないのだろう。

これは日本全体の問題で、当然のようにみなし残業込みで基本給が語られ、残業が常態化し、みなし残業時間を限界まで設定するのが最適解でそうしていない企業が不利になるような状態が是正されて欲しい。

色々な事情で本当にみなし残業制が双方に取ってメリットが大きい場合もあるだろうが、せめてみなし残業制や裁量労働制などを採用している場合は必ず応募前にその詳細が分かるようにして欲しい。

引用:https://anond.hatelabo.jp/20160925170021(リンク切れ)

転職ドラフトを利用した会員ユーザーがヤフー株式会社から内定をもらいましたが、最初の年収提示額である550万円が、実際には基本年収428万円と、当初の提示額から100万円以上の乖離があったそうです。

その点を質問したところヤフー側は「みなし残業時間25時間があるので、それを含めると491万円になる(※)ので間違っていないでしょ」という回答をしました。

※転職ドラフトでは指名額の9割以上を保証というルールがあります。

いやいやそれは転職ドラフトのルール違反ではないのか?と思い、転職ドラフトに問い合わせた。すると、転職ドラフトからは「各社員一律に必ず支給される報酬は年収額に含めることができるという基準のため、みなし残業分が指名額に含まれているのはルール違反ではない」という回答が来た。みなし残業分を含めても9割の495万に届いていない事のみ問題なのでそれは指摘しますとの事。なるほど…そういうものなのか…?

会員ユーザーはルール違反ではないかと感じたため、転職ドラフトに問い合わせた結果、転職ドラフト側では「みなし残業代は、提示年収に含めて良い(ルール違反ではない)」との回答だったそうです。

会員ユーザーの方は転職ドラフトを利用しようと考えている今後のユーザーが嫌な思いをしないためにも匿名サイトのはてなダイアリーに投稿したところ、共感するユーザーが増え、問題が表面化しました。

転職ドラフト側の問題点

問題が大きくなった理由として最初に年収を提示するのをサイトのコンセプトとしているのに実態は全然違っていたのがユーザーの感じた不満点であり、炎上した理由だと思います。これがリクナビNEXTやマイナビ転職であればここまで不満には感じなかったと思います。

ただし普通の求人サイトではこのような問題はあまり発生しません。そもそも普通の求人サイトでは最低でも「年収400万円(みなし残業代40時間含む)」と書きます。

一般的な企業は常識の範囲内として書きますし、求人広告代理店側も給与は詳細に記載するよう企業側に案内しています。「(みなし残業代40時間含む)」だけでは詳しい記載とは言えませんが、書いていればここまで応募者が不快に感じることもなかったと思います。

転職ドラフトのコンセプトは素晴らしいのですが、実態の運用の部分が未熟だったのが原因だと感じました。

リブセンスはエンジニアが多く在籍していることから、サイト開発系には強みを発揮しますが、私たち求人広告代理店としては当たり前だと思っている知識・サポートの部分が、少し足りなかったのは今回の反省点だと思います。

今回の転職ドラフトのサポート体制は不明ですが、ユーザ目線を大切にしない会社なのだと感じました。

採用百科事典
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今回の問題がここまで注目されたのは、実際に利用したユーザーが声を上げたからこそだと思います。企業やサービスへの不満を発信することには勇気が必要ですが、その声がきっかけとなってルールや運用が見直されることもあります。

転職ドラフト利用企業側の問題点

今回の件では転職ドラフト側だけでなく、ヤフー側にも問題点があったように感じます。

Y社は第2回ドラフトで参加者493名中90名もの大量指名を出しており、大手企業がこのような形で他の企業と登録者のマッチング機会を失わせるような行為を行っているのはどうかと思う。Y社の採用情報ページには手当の欄に「時間外勤務手当」としか記載されておらず、みなし残業制である事は確認出来なかった。そもそもみなし残業手当を含めても550万を大きく下回っているし、1次面接でも2次面接でも希望年収について繰り返し聞かれ、「ドラフトで指名頂いた金額で問題ありません」と答えたのだから、その額より下回るのであればその時に何か言って欲しかった。

仮にルール上問題がなかったとしても、求職者が「提示された年収」と「実際の内定条件」に大きな差を感じてしまえば、不信感につながるのは当然です。

特に転職ドラフトは年収を最初に提示することを特徴としているサービスであるため、通常の採用活動以上に年収の説明責任が求められます。

今回のケースでは、面接の過程で給与体系やみなし残業代の扱いについて十分な説明が行われていれば、ここまで大きな問題には発展しませんでした。

求職者は提示された条件を前提として選考を受けているため、最終段階で認識のズレが発覚すると「騙された!」「それ詐欺じゃない?」と感じてしまいます。

求人広告業界でも給与表記は特に慎重な対応が求められる項目です。基本給なのか、各種手当を含むのか、みなし残業代は含まれているのかなど、応募者が誤解しないようできる限り詳細に記載することが一般的です。

ヤフー側の採用担当者が無知なのか、もし給与の水増しを故意にしているのであれば悪質に感じるところです。流石に新人社員やアルバイトが登録ユーザーにスカウトメッセージを送っているわけがないので、おそらくは意図的に求職者のミスリードを狙ったと思われます。

ヤフーは当時から知名度・事業規模・福利厚生の充実度など、多くの求職者に支持される人気企業です。そのため、採用活動においても十分な競争力を持っています。

だからこそ、今回のヤフー側がおこなった行為はルールを悪用した考えであり、非常に残念です。ヤフーは採用に関して不親切だと言わざるを得ないでしょう。

採用百科事典
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企業と求職者の信頼関係は、給与や待遇といった重要な条件を正確に共有することから始まります。採用市場が活発になる中で、企業側にもより高い透明性と丁寧なコミュニケーションが求められるのではないでしょうか。

転職ドラフトの対応と改善策

転職ドラフトを運営するリブセンスは、問題が話題となった直後に公式見解を発表しました。特に新しいサービスではトラブル発生時の初動対応が信頼性を左右するため、スピード感を持ってユーザーへ説明した姿勢は好印象でした。

一方で、ユーザーから最初に問い合わせを受けた段階では「ルール上問題ない」という回答だったにもかかわらず、炎上後に改善へ動いたことで「問題が表面化したから対応したのではないか」と感じたユーザーがいたのも事実でしょう。

サービスへの期待が大きかったからこそ、運営側の説明やルール整備に対する厳しい意見が集まったのだと思います。

また公式発表では「改善案について協議を進めている」と説明されていますが、求人広告業界の視点から見ると、企業側へ年収の内訳やみなし残業代の有無を明確に記載するよう求めるだけでも、多くの誤解は防げたように感じます。

実際、一部の企業では通常の求人広告と同様に「提示年収はあくまで参考であり、最終的には経験・能力によって決定する」といった説明を行っていたようです。しかし企業ごとに運用ルールの理解度に差があり、サービスの理想と実際の運用との間にギャップが生じていたことも今回の問題の一因だったのではないでしょうか。

転職ドラフトは従来の転職市場にはない画期的なサービスです。だからこそ、ユーザーが安心して利用できるようルールの明確化や企業への周知徹底を進め、同様の問題が再発しない仕組みづくりに期待したいところです。

採用百科事典
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求人広告や採用支援に携わる立場としては、今回のような問題提起は非常に意義があると感じています。求職者が不利益を被る仕組みや分かりづらいルールは、利用者の声によって初めて改善されることもあります。

今回の炎上騒動から考える転職市場の課題

今回の問題は転職ドラフトだけの話ではありません。転職市場全体を見ると、給与の内訳が分かりにくい求人や、選考途中で条件が変わるケースは少なくありません。

特にIT業界ではみなし残業制度や裁量労働制を導入している企業も多く、年収の比較が難しくなっています。同じ「年収600万円」という表記でも、残業代の扱いや賞与の有無によって実際の待遇は大きく異なります。

また企業側も採用競争が激化する中で、少しでも魅力的に見せたいという思惑があります。しかし短期的に応募を集められたとしても、入社後のミスマッチや早期離職につながれば意味がありません。

求職者・企業・転職サービスの三者が信頼関係を築くためには、給与や待遇に関する情報をできる限り透明化することが重要です。今回の騒動は、転職市場全体が抱える課題を改めて浮き彫りにした事例だったのではないでしょうか。

まとめ

今回の件を通じて改めて感じたのは、給与情報の透明性がいかに重要かということです。

転職ドラフトは「最初に年収が分かる」という魅力的なコンセプトを掲げています。しかし、その数字の根拠や内訳が十分に共有されていなければ、ユーザーの期待を裏切る結果になりかねません。特に給与は求職者が最も重視する条件の一つであり、少しの認識違いでも大きな不信感につながります。

また、利用企業側もルールの解釈だけを優先するのではなく、求職者がどのように受け取るかを意識した説明が必要でしょう。仮にルール上問題がなかったとしても、「騙された」と感じる応募者が出てしまえば採用活動として成功とは言えません。

転職ドラフトの取り組み自体は、従来の転職市場が抱えていた課題に挑戦する非常に面白いサービスだと思います。今回の問題をきっかけに運営体制やルールが改善され、求職者と企業の双方にとってより信頼できるサービスへ成長していくことを期待したいと思います。

提示年収に関する事実確認、転職ドラフトの見解と今後の対策について(2016/09/26)
https://job-draft.jp/articles/94
提示年収に関する追加調査結果のご報告と、今後の対策について(2016/10/05)
https://job-draft.jp/articles/98

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ABOUT US
秋場亮一株式会社リクエストエージェント代表取締役
明治大学経営学部卒業後、ディップ株式会社に新卒入社。求人広告の法人営業を担当し、業種・職種を問わず数多くの採用支援に携わる。2011年に転職し、成功報酬型求人サイトの立ち上げと事業成長に尽力。中小企業から上場企業まで幅広く担当し、求人原稿設計、応募データ分析も担当。2016年に求人広告代理店を創業。企業の採用活動を支援しつつ、これまでの豊富な経験を活かし、就職・転職ノウハウを情報発信中。