新人研修でOJTを実施している企業が多くありますが、研修として成り立っている企業と、引き継ぎで終わってしまっている企業で社員の成長に大きな差が出ます。自分の会社がどちらに分類されるか考えながら読んでみてください。
OJTとは
OJTとはOn the Job Trainingの略で、業務を行いながらOJTトレーナー(先輩や上司)が新人を教育する研修方法です。OJTの最大の特徴は業務を遂行するにあたり必要な知識やスキルを、業務を通じて都度教えることで、新人の教育・育成をする点です。OJTの起源はアメリカの「4段階職業指導法」です。
4段階職業指導法とは
Show:やってみせる
Tell :説明する
Do :やらせてみる
Check:確認、追加指導
の4段階で構成されており、OJTの基礎になっています。OJTが日本の企業に入ってきたのでは1970年代です。その後も新人が配属されて来た時の指導法として定着しています。
OJTのデメリットは引き継ぎと混同している人が多いこと
多くの研修カリキュラムがある中で、なぜOJTは1970年代から現在に至るまで定着し続けているのでしょうか。
OJTのメリット
・低コストで人材育成ができる
・新人が自然に配属先になじめて、コミュニケーションの活発化につながる
・OJTトレーナーも成長する
・個人のペースに合せた内容やペースで教えることができる
・教育係が近くにいるので、わからないことがあってもすぐ質問できる
・実務を通じて教育するので研修後は即戦力として活躍してもらえる
OJTのデメリット
・OJTトレーナーのスキルにより身につく知識やスキルにバラツキが出る
・実務通じて学ぶので会社全体の流れがわかりにくい
・「OJT=業務の引き継ぎ」と勘違いしている人がいる
OJTのデメリットは引き継ぎと混同している人が多い事例
1.OJTトレーナーを退職する社員にまかせて、新人に自分の業務マニュアルを渡して一通り業務を教えた後「あとは、周りの人に聞いて」と退職してしまうケース
2.OJTトレーナーの社員が兼務している業務の中から、新人が業務の一部を教わって以降、通常業務に入れられてしまうケース
どちらも、OJTトレーナーの担当業務が新人に移行した時点で、上司が「これでOJT研修が終わった」と思い込んで、その後の研修やフォローがないので研修として成り立っていません。
OJTの意味を理解せずに業務を通じて研修をするのではなく、担当する業務を覚えてもらうことがOJTだと認識している上司の下では社員の成長に繋がりません。
引継ぎで終らせないOJT研修成功のポイント
OJTの意味をマネジメント層に理解してもらう
前途したようにマネジメント層がOJTの意味を理解していなければ、社員の成長に繋がらず研修とは呼べません。OJTがどういうものか、どうすれば社員が成長できるOJTになるのか、マネジメント層に理解してもらえるマネジメント向けの研修を開催しましょう。
OJTのゴールを設定する
新人にOJTが終った後、どのような人材になって欲しいのか目標を決めて教育計画を立てる。この目標と教育計画を共有してOJTに取り組んでください。
OJTトレーナーの目標を設定する
OJTトレーナーに、どんなマネジメントができるようになりたいのか目標を立てます。そのために今回のOJTでどのような目標を立てて達成すべきかを考えてください。
新入社員と中途社員で教育計画が異なるので注意
新入社員は基礎力がないので、足りない部分はOFFJT(eラーニング・通信教育など)を組み合わせます。中途社員には事前にどこまでできるのか、何ができないのか本人とすり合わせをしてから始めましょう。
OJTは「4段階職業指導法」と同じ方法で進める
1.OJTトレーナーがやってみせる(Show)
2.OJTトレーナーが説明をして質問を受ける(Tell)
3.新人にやってもらう(Do)
4.やってもらった新人に反省点ややってみて感じた疑問をヒアリングし、OJTトレーナーから改善点や補足説明を行う(Check)
結果(できた・できなかった)だけを評価しない
OJTトレーナーは失敗した原因を気付かせるようなティーチングやコーチング、ヒアリングスキルの研修を事前に受けましょう。そして、失敗した原因や成功した要素を一緒に考えて新人の成長に繋げるようにします。
難易度は少しずつ上げる
課題は基本を身につけたうえで少しずつ難易度を上げて失敗したら、失敗した原因を一緒に考えてあげましょう。
OJT研修の効果を高める1on1を実施
OJTトレーナーと新人、OJTトレーナーと上司でリラックスした状態で悩み(プライベートも含む)や、できていない課題について雑談を交えながら週に1度話し合う1on1を実施しましょう。
【1on1で毎週話すテーマ】
・今週取り組んだ課題
・成功したこと、失敗したこと
・成功した原因、失敗した原因
・次週の課題
前後で雑談や悩みを聞く機会を設けてコミュニケーションを取り信頼関係を築きます。
注意の仕方に気をつける
OJTトレーナーは教える人を他人と比較しない。「なんでできないの」という抽象的な叱り方や教える人を否定する、失敗を責めるといった行為を慎み、新人のモチベーションを下げないようにします。
OJTはOJTトレーナー1人に任せず、職場全体で進めるようにしましょう。また、OJTトレーナーの通常業務を他の人に振り分けて、OJTトレーナーの負担が大きくならないように配慮してあげてください。
まとめ
OJTでは業務さえ教えればいい、という考え方の社員が多くいます。まずは、この考え方を変えるところから始めましょう。OJTが計画的に行われるように、マネジメント層の意識改革を促す研修を実施するところから始めましょう。