アルバイト採用で準備したい雇用契約書(労働条件通知書)の基礎知識

アルバイト採用で準備したい雇用契約書(労働条件通知書)

アルバイト採用をするとき、「とりあえず口頭で説明して終わり」にしていませんか?

実は、アルバイト・パート採用でも労働条件の明示は法律上の義務です。時給やシフト、勤務時間、交通費、残業などを曖昧なまま採用してしまうと「聞いていた条件と違う」といった労務トラブルにつながるケースも少なくありません。

特に最近は、SNSや口コミサイト経由で労働環境が拡散されやすく、アルバイト採用でも“契約書を適当に扱う会社”への不信感は強まっています。

そこで今回は、アルバイト採用時に準備しておきたい雇用契約書(労働条件通知書)について、違いや必要な記載項目、法律上の注意点、よくある勘違いまでわかりやすく解説します。

雇用契約書(労働条件通知書)とは

雇用契約書(労働条件通知書)とは、会社と従業員の間で「どんな条件で働くのか」を確認するための書類です。

時給や勤務時間、シフト、休日、仕事内容、契約期間など、働くうえで重要になる条件を事前に明文化しておく役割があります。

アルバイト採用では、「学生バイトだから口頭だけで十分」「小さい店舗だから契約書は作っていない」というケースもありますが、実際にはアルバイト・パートでも労働条件の明示は必要です。

特に最近は「聞いていた条件と違う」「シフトの話が違う」といったトラブルがSNSや口コミサイトで広がるケースも増えています。だからこそ、最初に条件を書面で共有しておくことが以前より重要になっています。

なお、よく似たものに「労働条件通知書」があります。

労働条件通知書は、会社側が労働条件を通知するための書類です。一方で雇用契約書は、会社と従業員の双方が内容を確認し、合意したうえで取り交わす意味合いが強くなります。

実務では、「労働条件通知書兼雇用契約書」として1枚にまとめている会社も多く、アルバイト採用ではこの形式が一般的になりつつあります。

アルバイト採用で雇用契約書を作成するメリット

アルバイト採用で雇用契約書を作成する最大のメリットは「言った・聞いていない」のトラブルを防げることです。

実際、アルバイト現場で揉めやすいのは、仕事内容そのものよりも労働条件の認識違いです。

「週2日OKと聞いていたのに全然休めない」
「交通費が出ると思っていた」
「残業代が付くと思っていた」
「急にシフトを減らされた」

こうした問題の多くは、最初の説明が曖昧なまま採用してしまうことで起きています。

特に飲食店やサービス業は、忙しい現場の中で口頭説明だけで入社を進めてしまうケースも少なくありません。ただ、採用時はお互いに都合よく解釈してしまうことも多く、後から認識ズレが表面化します。

その点、雇用契約書があれば「最初にどう説明したか」を双方で確認できます。従業員側も条件を理解したうえで署名するため「そんな話は聞いていない」という状況になりにくくなりますし、会社側にとってもリスク管理になります。

また、きちんと契約書を整備している会社は、求職者からの信頼も得やすいです。最近は応募前に「契約書ありますか?」「労働条件通知書はもらえますか?」と確認する人も増えており、契約周りが曖昧な会社はそれだけで不安視される時代になっています。

契約書を交わした場合は、必ず控えを従業員にも渡して保管してもらうようにしましょう。

採用百科事典
採用百科事典
契約書を交わした場合は、必ず控えを従業員にも渡して保管してもらうようにしましょう。

アルバイト採用でよくある労務トラブル事例

アルバイト採用で多いトラブルのほとんどは、「最初に聞いていた話と違う」という認識ズレから発生しています。

特に多いのがシフト・交通費・残業代・退職時期です。

例えば飲食店では、「週2日OKと聞いていたのに、実際は週4〜5日入る空気だった」というケースがあります。逆に店舗側も「忙しい時は当然入ってくれると思っていた」という感覚で採用していることも少なくありません。

交通費もトラブルになりやすいポイントです。「全額支給」と思っていたら上限があった、「研修期間は対象外だった」など、説明不足による認識違いはかなり多いです。

また、学生アルバイトで特に多いのが残業代に関する問題です。
タイムカードを切った後に片付けを指示されたり、「着替え時間は勤務に含まれない」と説明されて揉めるケースもあります。

さらに最近増えているのが、退職時のトラブルです。
「辞める1か月前に申告」と口頭では伝えていても、契約書や就業規則に明記されていないため、「そんな話は聞いていない」となってしまうケースがあります。

こうしたトラブルは、雇用契約書や労働条件通知書で最初にルールを明確化しておくだけでも大きく減らせます。特にアルバイト比率が高い職場ほど、“なんとなく採用”を避けることが重要です。

雇用契約書・労働契約書・労働条件通知書の違い

雇用契約書と労働契約書というのは、ほぼ同じように使われていますが、厳密には異なります。雇用契約書は民法を根拠にしており、労働契約書は労働契約法を根拠にしています。

厳密には異なるわけですが、一般的にはかなり細かな違いになるため、雇用契約書=労働契約書として扱っている会社も多いです。基本的には片方のみ用意すればOKで、両方用意する必要はありません。多くの企業は労務トラブル防止のため使用者・労働者双方で確認・合意が必要な雇用契約書を用意しています。

雇用契約書がなくても労働条件通知は義務

会社にとって労働契約は必須のものですが、労働契約書自体は必須ではありません。アルバイトの採用の場合、労働契約書がない会社も多いですが、労働契約書がないという会社でも法令違反にはなりません。しかし、法令では会社は雇用の際に労働条件を記載した書面交付の義務(労働基準法第15条第1項)はあります。

少しややこしいですよね。例えば就業規則だけある場合が該当します。法律上では雇用契約時に就業規則を交付することでも、明示したものと認められます。また後述する書かなければいけない項目においても、雇用契約書に「別紙就業規則による」旨を記載し、就業規則を交付すれば問題ないとされています。難しい話になってしまいましたがベストなのは普通に雇用契約書を作成することです。

雇用契約書を作らない会社が危険と言われる理由

最近では、アルバイト応募時に「契約書はありますか?」「労働条件通知書はもらえますか?」と確認する求職者も増えています。

それだけ「契約内容を曖昧にする会社=危ない会社」という認識が広がっているということです。

実際、ブラックバイト問題が話題になって以降、求人内容と実際の労働条件が違うことに敏感な求職者はかなり増えました。

例えば、

「シフト自由と書いていたのに全然休めない」
「時給1,300円と書いていたのに研修時給だった」
「交通費支給と書いていたのに上限説明がなかった」

といったケースは、契約書が曖昧な会社ほど起こりやすい傾向があります。

特に小規模店舗では「昔から口頭だけでやっていた」というケースもありますが、今の時代はそれだけで応募離脱につながることもあります。

また、万が一トラブルになった際、「言った・言わない」の状態になると会社側が不利になりやすいです。SNSや口コミサイトで労働環境を書かれるリスクも無視できません。

雇用契約書は単なる事務作業ではなく、会社を守るためのリスク管理でもあります。採用強化や離職防止の意味でも、最低限の整備はしておきたいところです。

書類の名前は必ずしも雇用契約書でなくてもよい

労働条件を明示する書類は、必ずしも「雇用契約書」という名前で作成しなければならないわけではありません。

法律上重要なのは「書類のタイトル」ではなく、必要な労働条件がきちんと記載されているかどうかです。

そのため会社によっては、

  • 雇用契約書
  • 労働契約書
  • 労働条件通知書
  • 労働条件通知書兼雇用契約書

など、さまざまな名称で運用されています。

特に最近は「労働条件通知書兼雇用契約書」という形で、通知と契約を1枚にまとめている会社も増えています。アルバイト採用では、この形式のほうが管理しやすく実務的です。

ただし、名前だけ整っていても内容が不足していれば意味がありません。勤務時間や時給、休日、契約期間、仕事内容など、法律で定められた労働条件が記載されていなければ、トラブル時に会社側が不利になる可能性があります。

名称にこだわるよりも「必要事項が整理されていて、スタッフにきちんと説明できる状態になっているか」を重視することが大切です。

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雇用契約書(労働条件通知書)に必要な記載項目

労働基準法では労働条件の一部について、明示しなければならない項目が決められています。

賃金・労働時間などの「絶対的明示事項」(昇給に関する事項を除き書面の交付が必要)と「相対的明示事項」(定めがある場合に明示が必要。口頭での明示も可)とに分けられます。絶対的明示事項には勤務時間、休憩、休日、休暇、賃金、退職に関することが当てはまります。

相対的必要記載事項には会社で独自に定めているもの(退職手当、賞与等)があれば、記載しなければならないこととなっています。つまり 『雇用形態』『雇用期間』『就業時間』『時間外労働』『休日休暇』『賃金形態』『保険』などの基本的な労働条件の記載事項が必要になります。

※法律以外の記載も問題ありません。多くの企業が法律以外にも会社独自の契約事項を盛り込んだ「雇用契約書」を用意して従業員と取り交わしています。

書面で明示しなければならない項目(絶対的明示事項)

1.労働契約の期間に関する事項
→契約期間の定めがある場合にはその期間、ない場合にはその旨
2.労働契約期間の定めがある場合→更新の有無および更新の基準
3.就業の場所及び従事する業務に関する事項
4.始業及び終業の時刻、所定労働時間を越える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに交代制の就業転換に関する事項
5.賃金(退職手当及び8に掲げるものを除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締め切り及び支払の時期、昇給に関する事項
6.退職に関する事項(解雇の事由を含む)

定めがある場合に明示が必要な項目(相対的明示事項)

7 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
8 臨時に支払われる賃金、賞与及び一箇月を超える期間の出勤成績によつて支給される精勤手当、一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当 、一箇月を超える期間にわたる事由によつて算定される奨励加給又は能率手当並びに最低賃金額に関する事項
9 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
10 安全及び衛生に関する事項 (パートタイマーについては努力義務)
11 職業訓練に関する事項 (パートタイマーについては努力義務)
12 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
13 表彰及び制裁に関する事項
14 休職に関する事項 (パートタイマーについては努力義務)

無断欠勤・懲戒ルールはどこまで記載できる?

スタッフの無断欠勤が続き、連絡が取れない状況になっても、契約書や就業規則に「無断欠勤が継続して2週間をすぎれば退職とする。」などと書いておけば、本人の承諾を得ずに退職(もしくは解雇処分)とすることが可能になります。

記載事項の中には「無断欠勤は〜円の減給処分」と懲戒処分(反則金や違反金は違法)について書くことも可能です。ただし労働者に対して減給の制裁を定める場合は、『総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない』と定められています。

最低時給や労働時間は法律で定められています。無断欠勤のせいで損害が発生していたらその分の賠償を求める権利が雇用主側には存在しますが、労働者にとってあからさまに不利な契約書、労働条件は法律上も無効になります。

損害賠償もアルバイト契約の場合は勝訴できる可能性は低く、違法な場合は雇用主(バイト先)が罰せられる可能性もありますので注意が必要です。

雇用契約書を交付しない場合の罰則

雇用する側の企業が労働条件を明示しなかった場合でも労働契約自体は成立します。しかし企業側には未交付の罰則として30万円以下の罰金が処せられます。(労働基準法第120条第1号)

パートの場合は過料(かりょう)として+10万円がかかります。雇用契約書は労働契約法を根拠法としていますが労働契約法には、そもそも罰則がありませんので雇用契約書を交わさなくても罰則はありません。

紙と電子契約はどちらでも問題ない?

以前は雇用契約書や労働条件通知書を紙で交付する会社がほとんどでしたが、最近では電子契約を導入する企業も増えています。

結論から言えば、一定の条件を満たしていれば電子交付でも問題ありません。

実際、クラウド型の労務管理サービスを利用して、スマホ上で契約内容を確認・同意してもらう会社もかなり増えています。特にアルバイト採用が多い飲食・小売・サービス業では、入社手続きの効率化につながるため導入が進んでいます。

ただし注意したいのは「本人が確認できる状態になっているか」です。

例えば、

・あとから契約内容を見返せない
・PDFを送っただけで説明がない
・スマホで文字が見づらい

といった状態では、後々トラブルになる可能性があります。また、高校生アルバイトや外国人スタッフの場合は、電子契約だけだと内容理解が不十分になるケースもあります。

そのため実務では「電子契約+重要部分は口頭でも説明する」という運用をしている会社が多いです。紙でも電子でも重要なのは「労働条件を曖昧にしないこと」です。形式だけ整えても説明不足では意味がありません。

無料で使える雇用契約書・労働条件通知書テンプレート

弊社おすすめのシンプルなテンプレートと厚生労働省が推奨している労働条件通知書の文書テンプレート(書き方・例文・文例と書式・様式・フォーマットのひな形)です。これから利用するという人は無料ですので自由に活用してください。

下記の厚生労働省HPのページ下段に表示されている様式名「労働条件通知書」の列から同じファイルが無料でダウンロード可能です。

Word形式のため自社用にカスタマイズすることが可能です。上のファイルは一般労働者用ですが厚生労働省のHPでは短時間労働者用や派遣労働者用や建設労働者用など様々な様式があります。

主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)|厚生労働省

アルバイト採用時に知っておきたい就業規則の基礎知識

就業規則は、10人以上の社員がいる会社では作成を義務づけられています。

逆に言うと、10人未満なら作る必要はないので、存在しない会社も多くあります。また正社員用の就業規則はあっても、アルバイト・パートはないという会社もあります。

就業規則は正社員とアルバイトを同じ内容にすることも可能ですが、雇用形態に応じて就業規則を作成したほうがよりわかりやすいです。具体的な処遇条件も違うと思いますので、アルバイト専用の就業規則を作成できればベストです。

採用百科事典
採用百科事典
雇用契約書も労働条件通知書も、法律上、有効なものとなるため、なくさないように大切に保管しておきましょう。合わせて就業規則も作成しておくことをおすすめします。気になる人は社会保険労務士に一度相談してみましょう!

まとめ|アルバイト採用こそ雇用契約書の整備が重要

アルバイト採用では「短時間勤務だから」「学生バイトだから」と契約を曖昧にしてしまう会社も少なくありません。しかし実際には、労務トラブルの多くが“最初の説明不足”から発生しています。

だからこそ、勤務条件やルールを明文化した雇用契約書(労働条件通知書)を整備しておくことが重要です。

特に飲食店やサービス業などアルバイト比率が高い職場では、契約内容を明確にするだけでも無断欠勤や早期離職、認識違いによるクレーム防止につながります。

採用後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐためにも、自社に合った雇用契約書や就業規則を一度見直してみることをおすすめします。

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ABOUT US
秋場亮一株式会社リクエストエージェント代表取締役
明治大学経営学部卒業後、ディップ株式会社に新卒入社。求人広告の法人営業を担当し、業種・職種を問わず数多くの採用支援に携わる。2011年に転職し、成功報酬型求人サイトの立ち上げと事業成長に尽力。中小企業から上場企業まで幅広く担当し、求人原稿設計、応募データ分析も担当。2016年に求人広告代理店を創業。企業の採用活動を支援しつつ、これまでの豊富な経験を活かし、就職・転職ノウハウを情報発信中。