転職は若い人が有利といった風潮があり、35歳限界説という言葉もあるため、30代後半以上の人の中には転職を踏みとどまっている人も少なくありません。
しかし、39歳での転職が遅いとは一概に言えません。社会人経験が豊富な39歳だからこそ、20代や30代前半にはない強みやメリットもあります。
そこで本記事では39歳の転職事情を確認した上で、39歳で転職するメリット、転職に失敗する人・成功する人の違い、注意点などを解説していきます。
39歳の転職市場の実態
39歳で転職している人は他の年代と比べて少ないです。
厚生労働省「令和3年(2021年)雇用動向調査結果の概況」によると、35~39歳の転職入職率は男性が約8%、女性が約10%となっています。
出所:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」
第二新卒枠を活用して転職する人も含まれるからなのか、20代の転職入職率は男女ともに他の年代よりも高いです。30代になると男女ともに転職入職率は下がり、男性については約9%と一桁台になっています。
また、男性の入職転職率は19歳以下から45~49歳まで年齢に比例して下がっている点が特徴です。男性は年齢を重ねるごとに転職を検討する人の数が減り、かつ転職のハードルが上がります。
一方、女性は19歳以下から65歳以上まで転職入職率は増減を繰り返しています。その背景には女性の方が男性よりも育児や介護などの都合に合わせて退職や社会復帰する人が多いためです。
上記から39歳で転職している人は他の年代と比べて少なめですが、逆に言うとライバルが20代や30代前半となるため、戦い方次第では十分転職は可能です。
未経験の職種への転職は難しい
関東の有効求人倍率は、39歳が含まれる年齢でも平均して1.0以上です。
専門的・技術的職業の倍率は高く、転職しやすいと考えられます。また、これ以外の倍率が高い業界も同様です。
一方で転職者の人気が高い業界は倍率が低く、とくに未経験の職種に就くことは難しいといえるでしょう。
年齢 | 全職業( )内は比率 | 専門的・ 技術的職業 ( )内は比率 |
34歳以下 | 1.63(1.00) | 2.07(1.00) |
35〜44歳 | 1.30(0.80) | 1.84(0.89) |
参考:厚生労働省「関東労働市場圏有効求人・有効求職年齢別バランスシート(2023年3月)」
39歳で転職するメリット
30代後半はそれ以下の年齢と比べると転職のハードルが高いと言えます。しかし、20代や30代前半ではなく、39歳だからこそ転職において得られるメリットもあります。
以下で39歳が転職するメリットについてそれぞれ解説します。
年収アップを期待できる
企業は35歳以上の転職者に対して即戦力や若い世代のマネジメントをしてもらうことを想定しています。
そのため、過去の経験や高いスキルが評価されれば、現職以上の年収での採用を見込める可能性もあります。
また、転職では社会人としての経験や実績が重視されるため、学生時代には高嶺の花だった企業に入社するチャンスでもあります。
大学時代の就職活動で憧れていた企業から内定を得られなかった人も、中途採用では社会人としてのスキルや経験が評価されて内定を得られることもあります。
転職による年収アップを目指したい人は自分の経験やスキルを活かせる企業の他、大手企業や売上が右肩上がりの企業を受けることをおすすめします。
キャリアアップのチャンスがある
新たに始める新規事業や新規プロジェクトのマネジメント職を外部から迎え入れるために、中途採用の求人を出している企業もあります。
こうした求人を出している企業は社内に新規ビジネスに関する知識のある人材がいない状態であるため、外部から招き入れようと考えているケースがよくあります。
例えば、大企業で特定の業務に長年にわたって携わってきた人であれば、転職先において新規事業のプロジェクトリーダーなど、企業の今後を左右するようなプロジェクトにおける重要なポジションを任せてもらえるようなことも珍しくありません。
現在の職場では昇進のチャンスがない人や昇進を見込みにくい人は、自分のスキルを評価してくれる企業を見つけることでキャリアアップを実現できることもあるでしょう。
40代や50代よりも有利な年齢
本来は求人募集において年齢制限は原則NGですが、実際には「35歳以下」「39歳まで」といった年齢制限を設けている企業も少なくありません。
30代後半になると年齢制限に引っかかりやすく、年齢を理由に応募することさえもできない企業も出てきてしまいます。そうなると、スキルや経験を活かして昇給・昇進の機会を得るチャンスも少なくなります。
また、アプローチできる企業の数が少なければ、内定を得られる可能性もそれだけ下がってしまいます。企業の求人における年齢制限は35歳と39歳が一つの区切りにされていることが多いため、39歳であれば40代や50代よりも年齢制限に引っかかりにくいです。
39歳からの転職を成功させるポイント
未経験の職種は勉強や非正規からアプローチする
39歳まで同じ会社にいた場合は、実務を習得して管理職に移行する時期であり、新たなチャレンジとして異なる職種への転職を考えることもあるでしょう。
資格取得やWeb講座・スクールでの学びを経て転職に臨むことや、正社員登用制度のあるパートタイムに就いて仕事をしながら学ぶというアプローチもあります。
転職者が多く定着する割合も高い「生活関連サービス業」等は、受け入れられやすい転職先と考えられます。
産業別入職率(全年齢・2021年)
順位 | 業種 | 入職率 |
1 | 生活関連サービス・娯楽 | 28.6% |
2 | 宿泊・飲食 | 23.8% |
3 | その他サービス | 18.5% |
産業別入職超過率(全年齢・2021年)
順位 | 業種 | 入職超過率 |
1 | 生活関連サービス・娯楽 | 6.3% |
2 | 教育・学習支援 | 2.5% |
3 | 情報通信 | 2.4% |
参考:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要 – 産業別の入職と離職」
汎用的なスキルをアピールする
39歳は職種周辺のあらゆる業務知識があるため、職種未経験であったとしても、周辺知識が転職先にとって魅力的な場合があるでしょう。
【アピールできる汎用的なスキル】
- マネジメント能力
- 業界で評価される技術・技能・知識
- 業務の遂行に影響を与える資格
汎用的なスキルを特定するためには、自己分析をすることがおすすめです。
これまでの業務で培ってきた経験を棚卸しして抽象化することで、自分が有している汎用的なスキルが見つかることがあります。
ただし、自分1人ではなかなか気づきにくかったりすることがあるので、そういった方はキャリアコーチングなどの有料転職相談サービスを利用することも一つの手です。
関連記事:有料で転職相談ができるサービス15選!料金や特徴を徹底比較します!
企業研究が志望理由につながる
転職においても企業研究は有効です。
39歳は、その後のライフプランが考えられる年齢であるため、新たな企業で自身の仕事と生活の将来像を描けるチャンスがあります。
【企業研究のやり方】
- 自身の価値をさまざまな視点で客観的に捉える
- 企業を研究してニーズを把握する
- 自身が持つスキルとのマッチングを行う
- 女性で出産・育児がある場合、それらに配慮した制度があるかを確認する
- マッチしていると考えられる部分を志望理由にする
転職支援サービスを利用する
39歳が転職活動を進めていくにあたって2つの方法があります。
- 自力で求人選定から選考対策まで行う
- 転職エージェントなど転職支援サービスを活用する
私の経験上、転職支援サービスを活用した方が納得した転職を実現させやすいです。
転職支援サービスをおすすめする理由は以下の4点です。
- 自己分析や企業研究など転職活動の事前準備をサポートしてくれる
- 非公開求人含め求職者の希望に沿った求人提案をしてくれる
- 企業の人事から採用ポイントを押さえた上で選考対策をしてくれる
- スケジュース調整や年収交渉などを代行してくれる
転職支援サービスは企業から採用仲介の手数料をもらうビジネスモデルです。
そのため、転職希望者は基本的に全てのサービスを無料で受けることができるので、転職を考えている人は利用して損はないでしょう。
39歳の転職における注意点
ここまで39歳の転職におけるメリットや成功させるためのポイントを解説してきましたが、注意点を確認せず転職活動を行ったばかりに転職活動中や転職後に後悔することもあります。
以下で39歳から転職する際の注意点を見ていきましょう。
スキルや経験不足だと不利になる
35歳くらいまでであれば、未経験であっても従業員を育てていこうという雰囲気があります。
そのため、企業は20代や30代であれば完全未経験でも将来的な活躍を期待して、業務に必要となる知識や技術をイチから教えてもらえます。
一方、企業は35歳以上の求職者に対して即戦力を求めている傾向にあります。そのため、書類や面接の段階で即戦力として働けることをアピールできなければ、年下の応募者よりも不利になりやすいといえるでしょう。
家族からの理解が必要になる
30代後半になると既婚者や子どもがいる人の割合が高くなります。
独身(単身者)であれば自分の思うままに行動できる他、自分の生活を維持できるだけの給与を得られればよいですが、男性女性関わらず既婚者はそういうわけにもいきません。
パートナーに転職活動の期間は収入が途絶えることや、転職に失敗したときに生じる可能性などを理解してもらう必要があります。また、転職先によっては家族での引っ越しや単身赴任も現実となりえます。
年収が下がる可能性がある
転職したからといって確実に年収がアップする保証はないばかりか、むしろ下がる可能性があることも留意しておかなければなりません。
厚生労働省「平成27年(2015年)転職者実態調査の概況」では35~39歳の転職による給与の増減についての調査結果が明らかにされています。
- 増加した 43%
- 変化なし 22%
- 減少した 34%
- 不明 1%
出所:厚生労働省「平成27年(2015年)転職者実態調査の概況」
この調査では、35~39歳の転職者の中で給与が「増加した」と回答した人は43%と最多となりました。次いで「変わらない」が22%となっています。ただし、「減少した」と回答した人も30%以上いるため、転職によって給与がアップすると安易に考えるのは禁物です。
39歳であっても異業種、もしくは完全未経験の業界に転職した場合は新人からのスタートとなるため年収は一般的に下がります。一方で、スキルやこれまでの経験が評価されての転職となれば、年収を大幅にアップできる見込みも高いでしょう。
年収を下げたくないという39歳の方は、今の自分の市場価値がどれくらいかを「ビズリーチ」のスカウトによって判断するのもおすすめです。
39歳で転職に失敗しやすい人の特徴
39歳で転職に失敗しやすい人にはいくつかの共通点を見出すことができます。
転職に失敗しやすい人の特徴を押さえておくことで、転職活動を効果的に進めることができます。
企業へアピールできる強みがない
企業は39歳の応募者に対して即戦力としての役割を求めています。
応募企業に対して自分がどのように貢献できるかや、これまでの経験を業務にどのように活かせるか説明できなければ内定を得ることは難しいです。
社会人経験のある人であっても業務に直結するスキルや経験などをアピールできなければ、面接において高い評価を得にくい傾向にあります。
そのため、応募先企業の業務内容や求める人物像をしっかりとリサーチし、自身がそれらにどの点でマッチするのかよく考えるようにしましょう。
高望みをしている
転職を検討している人の中には残業が多い、給与が安い、労働環境が悪いといった不満を抱えている人も多いです。
あるいは、ネームバリューがある企業や大手企業で働きたいという目標を実現したいと考える人も多いでしょう。
しかし、自身の市場価値を理解せず、実力以上の企業ばかりに応募していては内定を得ることはできません。
残業が少なく、高い年収を期待できる企業は応募者も多く倍率も高いため、他の応募者よりも優れたポイントや業務に活かせる経験がないと入社は難しいです。
完全未経験の業界へ転職検討している
35歳以下であればこれまでに経験したことのない業界であっても転職できる見込みはあります。企業は応募者が将来的に自社に利益を与えてくれる人材になることを期待して、育てていくことを前提にしているためです。
一方で35歳を過ぎると、即戦力やマネジメント職を見越しての採用となるため、異業種にチャレンジすることが難しくなります。
異業種への転職を希望している人は業務に直結する資格を取得したり、自主的に知識を取得したりするなどして、業務に携わる上での基本スキルがあることを面接で証明できるようにしておくことをおすすめします。
柔軟性がない
企業にはそれぞれのカラーやルールがあります。
ある企業では常識となっていることでも、別の企業では非常識となることも珍しくありません。39歳は他社での勤続年数が長いがゆえに、新しい環境に馴染めるか懸念されることも多いです。
例えば、企業は社会人経験豊富な応募者に対して前職のルールや常識を持ち出したり、何かと前職と比べたりしないかと考えてしまいます。
転職する場合は新しい職場のカラーやルールを優先し、現在置かれている環境に馴染もうとする姿勢が大切です。新しい環境で求められることに対して柔軟に対応していく必要があります。
39歳で転職に成功しやすい人の特徴
39歳で転職を検討している人は同年代で転職活動に成功している人の特徴を押さえた上で転職活動をしてみてください。
行き当たりばったりで転職活動をしても時間や労力を浪費することにもなりかねません。転職で成功する人の特徴を知ることで、自分に欠けている要素が見えてくることもあるでしょう。
前向きな理由から転職活動をしている
転職を検討している人の多くが人間関係の問題や給与の低さへの不満を抱えています。
転職の面接では転職理由について高い確率で質問されますが、このときに前職の不満ばかりを話すと印象が悪くなるため注意してください。
採用担当者は前職の悪い部分を中心に話す応募者に対して、不満を抱きやすい人ではないかと懸念します。
面接で転職理由について聞かれた際は「新しいことにチャレンジしたい」「これまでの経験を活かして、〇〇をしてみたい」といったように前向きな返答を心掛けましょう。
自己分析をしっかりしている
転職活動では自己分析をしっかりと行っているかがキーポイントになります。
自己分析を行うことで自身の強みや弱み、セールスポイントを整理できます。また、自己分析によって仕事に対する目標やキャリアプランが見えてくることもあります。
学生時代に自己分析を行った人も転職活動において自己分析を再度行ってみるようにしてください。
社会人として実際に働いてみたことによって、仕事に対する考え方や自身に対する捉え方など変化している点も多いはずです。
家族から理解を得ている
転職活動を成功させるためには家族からの理解を得ることも重要です。
転職活動をしている人の中には転職先が決まったら家族に話そうと、転職活動を周囲に内緒で行っている人も珍しくないと見受けられます。
転職活動は想定以上に長期戦になることも珍しくないだけでなく、心身ともに疲弊するものです。家族からの支えがあることで高いモチベーションを維持できたり、気持ちがふさぎ込んだときに相談できたりします。
まとめ
応募先企業の業務に直結するスキルや豊富な経験がある人であれば、転職による昇給・昇進を実現することも期待できます。
また、20代や30代前半の応募者よりもセールスポイントが多くあれば、歳を重ねていることが強みにもなりえます。
一方で、未経験の状態で異業種への転職を検討している人や応募先企業にアピールできるポイントがない人は転職活動が長引く恐れがあります。
39歳で転職を検討している人は自分のスキルやこれまでの経験を活かせる業界を中心に応募してみることをおすすめします。