45歳という年齢は長期間同じ企業でキャリアを積み、経験やスキルを身につけてきた人も多いはずです。しかし、45歳での転職は成功率が高いとはいえず、タイミング的に「遅い」と感じる場合も出てくるでしょう。
他の企業への転職活動を行っても、思うように希望の求人が見つからなかったり、転職をしても待遇が下がったりする可能性も高くなってしまいます。そこで今回は、45歳での転職の難しさや失敗・成功する人の違い、転職活動の注意点をまとめました。
45歳の転職が難しいと言われる理由
45歳の転職は可能であるものの、厳しいです。
長い経験やキャリアを持つ優秀な人材であっても、45歳という年齢が転職を厳しくすることがあります。その理由として、以下の4点が考えられます。
求人数が限定される・採用率が下がる
2007年に改正された雇用対策法(現・労働施策総合推進法)で、原則的に人材の募集や採用にあたって年齢制限を設けることは禁止されました。
法律上では45歳でも求人募集への応募は当然可能ですが、年齢制限が必要な職種や長期勤続によるキャリア形成が必要な求人など、6種類の例外事由を設けることは認められています。そのため、45歳が対象となる求人数は減ってしまいます。
たとえ45歳が対象の求人へ応募したとしても、45歳以降の転職は45歳未満よりも採用率は下がるといわれます。この世代は異なる企業で長年経験を積んでいますが、若い世代よりも適応能力が落ちてしまい新しい環境での仕事に適応できないことが多いことも、転職を難しくさせています。
転職先で給料が落ちる可能性がある
給料や待遇をアップするために転職を検討することもありますが、45歳の転職では給料・待遇アップどころか、逆に前職より低くなる可能性もあります。
厚生労働省が実施した令和3年度(2021年)雇用動向調査によれば、45~49歳の転職者の賃金は35%で増加しているものの、29%は減少しており、10%以上賃金が減少した人も20%を占めています。
20代・30代でも賃金が減少した転職者は20~30%を占めますが、キャリアを積んでスキルを身につけている45歳であっても、転職で必ずしも賃金が上がるわけではありません。
若い世代とは異なり、45歳は家庭を持っている人も多く、子供の教育費などに負担がかかることもあり得ます。そのような中で給料や待遇が下がる可能性があるとなると、転職は厳しいといえるのではないでしょうか。
出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果転職入職者の状況」
若い世代より高いスキルを求められる
若い世代は育成を前提で採用することがあります。つまり、高度なスキルは求められないことが多いといえます。しかし、45歳の転職では若い世代にはないスキルや経験を活かして会社に貢献することが求められます。
育成を前提として採用されることは、まずないといっていいでしょう。年齢的にも一定のマネジメント経験があるとみなされるので、転職先の同世代の社員と同等、またはそれ以上のマネジメントスキルやキャリアが求められます。
未経験の業種・職種への転職は困難
若い世代の転職の場合、未経験でも転職できるチャンスはあります。採用後のポテンシャルを見込んで採用されることが多いからです。
一方、45歳の転職ではポテンシャルを見込んだ採用が行われることはほぼなく、スキルや経験が重要視されます。
まったく未経験の業種や職種への転職は若い世代と比較すると圧倒的に不利なので、これまで経験した業種や職種への転職に限られてしまうことが、45歳の転職を難しくさせています。
45歳で転職をするメリット
転職は年齢が若い方が有利と考えられていることが多いですが、45歳という年齢にメリットがまったくないわけではありません。若い世代にはない、以下の2つのメリットがあります。
スキルや経験を強みにできる
転職において、45歳が有利になるポイントは、これまで培ったスキルや経験です。仕事を通して得たスキルは就業経験の浅い世代にはないものなので、これを強みに転職を進められます。
専門分野があればより有利になり、転職先で即戦力として活躍できることは大きなメリットとなるでしょう。
年収アップの期待ができる
スキルや経験次第で年収アップにつなげられるのがメリットです。
45歳での転職では、前職よりも年収ダウンの可能性があると説明しましたが、年収アップに成功している人も少なくありません。
確かに、転職によって年収がダウンした人の割合は約30%を占めていますが、逆に年収アップした人はダウンした人よりも多い割合です。
転職したからといって年収が下がるとは限らず、今の職場で働き続けるよりも年収アップが望めるチャンスもあります。
45歳の転職で失敗する人の特徴
同じ45歳という条件でも、希望以上の条件の企業への転職が成功する人がいるのに対し、前職よりも給料や待遇が下がり、失敗したと感じる人もいます。
45歳の転職活動で失敗しがちな人には、若い世代と同様の特徴もあれば、これまでの社会人としての経験が逆に転職への妨げになってしまうケースも考えられます。
希望条件にこだわりすぎている
転職をするにあたって、できるだけ条件の良い仕事を見つけたいと思うのは、世代を問わず誰しも考えることです。最低でも現状維持はできるように、できれば年収や待遇はアップさせたいなどの希望条件を持つ人も多いでしょう。
しかし、ただでさえ厳しい45歳の転職で希望条件を出しすぎたりこだわりすぎていたりすると、転職できる企業の幅を狭めてしまいます。すると、ますます転職が難しくなる結果となり、転職活動の失敗につながる可能性があります。
目標を持たずに転職活動をしている
今の仕事に不満がある、条件が悪いなどの理由のみで転職を希望する人は、転職へ向けての目標が曖昧です。年齢的にも、45歳での転職は転職先の企業が何を求めているか、これまでの経験を活かして自社に何を与えてくれるのかが要求されることも多いものです。
転職後の具体的なプランを持たずに、ただ「転職したい」というだけで転職活動をしていても、成功は難しいでしょう。
過去に固執している
過去の実績は転職の際のアピールポイントになりますが、固執しすぎることはマイナスです。今の職場で経験を積みスキルを身につけて、評価が上がっているからといって、他の企業で同じように評価されるとは限りません。
過去に高い評価を受けているとそのやり方に固執してしまいがちで、転職先でその他のやり方に対応できずに評価が下がる恐れもあります。
45歳の転職で成功する人の特徴
転職活動に失敗する人がいる一方で、仕事の進め方や転職活動においての心構えなどを変えれば、成功するチャンスも十分にあります。
45歳の転職で成功ケースは、転職希望者の特徴にも一因があります。45歳での転職を成功させるには、成功している人が持つ以下の特徴を意識してみましょう。
異なる環境に対応できる
45歳で転職活動をするまでの間、1つの企業にしか勤務したことがないケースもあるでしょう。過去に何度も転職経験がある人と比較すると、転職経験がない人は異なるやり方や環境に馴染めないこともあります。
長い間同じやり方のみを続けていると、どうしても違うやり方は対応しづらいものです。そこで、45歳の転職では対応力が求められます。異なる環境や仕事の進め方でも柔軟に対応できれば、転職先でも成果を出せる期待ができます。
即戦力で活躍できる
20代のように人材育成を行うことを前提としない45歳の転職では、入社後すぐに会社に貢献できる即戦力が求められます。
これまでのマネジメント経験や高度な専門知識なども含めて、転職先でどのように貢献できるか、即戦力を具体的にアピールできる人材の方が成功しやすいといえます。また、即戦力をアピールするためにも、自分自身の強みを知っている人の方が成功に近くなるでしょう。
希望条件や退職理由を明確にしている
失敗する人でも挙げたように、希望条件にこだわりすぎることは45歳の転職では不利に働くことがあります。逆に条件を洗い直してきちんと絞り込み、明確にしていれば無駄なこだわりがなくなり、本当に必要な条件のみで仕事を探せます。
同様に、退職理由も明確であればこれから働く職場で望む条件も整理できるはずです。その条件に沿って転職活動を行うことで、成功に近づけるでしょう。
45歳の転職を成功させるための注意点
すべての年代において、転職活動は簡単には進まないと言えます。ましてや、求人数が少なくなる45歳の転職になると難易度はさらに高くなってしまいます。
そんな45歳での転職を成功させるためには、以下でご紹介する注意点とポイントを押さえておきましょう。
条件で絞り込みすぎない
45歳の転職で求人を探してみるとわかりますが、20代や30代よりも求人数そのものが少ないはずです。条件や待遇が理想的であっても、自分自身が募集の対象外となっている求人も多く感じるでしょう。
求人数が少ない中で条件を絞り込みすぎると、応募できる求人数が減ってしまうことが第一の注意点です。転職に失敗する人の例でも挙げたように、45歳の転職では条件を絞り込みすぎることは好ましくありません。
失敗を防ぐには、転職先に求める条件のこだわりを一度見直すことが重要です。どうしても譲れない条件は残しながらその他の条件を緩めて求人を探す、または条件に優先順位を付けてみることも必要です。
目標やキャリアプランを明確に設定する
何も目標を持たない状態での転職活動は、失敗しがちです。
まず転職活動をするにあたっては、転職後の自分がどうなっているか、何を達成しているかなどの長期的な目標やキャリアプランを明確に立てておきましょう。目標に向かって転職活動を進められるだけではなく、転職後も仕事への意欲を持って働けます。
書類選考や面接時も、設定した目標とキャリアプランをアピールすることでその企業や仕事に対する熱意が評価されることもあるので、採用へ有利に働くことも期待できます。
転職活動を中断しない
転職成功への条件が厳しくなる45歳での転職活動は、思うように進まないことが多いものです。
なかなか転職先が決まらないと、だんだんとモチベーションが下がり、転職活動をしなくなってしまいがちである点も、注意したいところです。転職先が決まらないからと転職活動を辞めてしまうのは本末転倒で、転職のタイミングを遅くするだけです。
転職のタイミングが遅くなるにつれて、ますます希望の求人は見つけにくくなってしまいます。転職活動がうまくいかずにモチベーションが下がり気味になった場合は、転職後の目標やキャリアプランを見直してみましょう。
もし将来的に転職活動を再開する希望や可能性があるなら、早い段階で転職活動を行う方が有利なので、転職活動を継続しましょう。
転職先決定前の退職は避ける
転職活動を優先するために次の転職先が決まる前に退職する人もいますが、できるだけ避けた方がいいです。転職活動に重点を置いても転職先が決まるまでに長い時間を要する可能性もあり、退職後ではその間、無収入となるからです。
退職して転職活動に専念したからといって、すぐに転職先は決まりません。貯金や退職金を切り崩して転職活動を続けていると、予想以上に出費がかさむこともあります。
仕事と転職活動の両立は負担が増えますが、転職先が決まるまでに時間がかかる可能性も考慮し、できるだけ仕事を続けながら転職活動を進めることをおすすめします。
まとめ
45歳での転職は、求人数の減少や中途採用の転職難易度の高さもあって「遅い」と言われることがあります。しかし、決して転職が不可能な年齢ではなく、今までの経験やキャリアを強みとすれば、希望の転職先が見つかることもあります。
45歳で転職を希望するなら、今回ご紹介した情報を参考に転職活動を進め、新たな職場で再出発してみましょう。