東芝の経営危機から学ぶ人材マネジメントと組織論

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昨今、日本の大企業の不祥事や赤字決算など大きなニュースが飛び交っています。シャープの買収。電通社員の過労自殺。神戸製鋼の不正問題。その中でも大きなニュースが東芝の粉飾決算における倒産危機です。

東芝の2017年3月期の連結最終損益が最大で1兆100億円の赤字(従来予想は3900億円の赤字)となる可能性も発表。債務超過額は17年3月末で6200億円となる可能性も明らかにされ、倒産危険度が高まりました。倒産する確率はかなり高いとも言われ「秒読み」との意見もあります。

一部メディアでは不正会計または不適切会計という報じられ方をしており、若干マイルドな書かれ方をされていましたが、明確な粉飾決算と言われています。しかもその要因は人事の体質にあると指摘されています。なぜ、日本を代表する大企業である東芝があれだけの大きな不正を行ってしまったのか。それを人材という切り口で、解説していきます。

1:会社にとって優秀な人材を冷遇していた

扇会とは、東芝に再就職した公安警察OBらがメンバーとなり、特定の従業員をピックアップ、“問題あり”と見なした人の職場内外での活動を本社勤労部門に通報する組織とされる。

引用:【特集】東芝解体 マル秘資料が語る本当の「理由」 – 共同通信

東芝には社内新選組のような組織「東芝扇会」があることを、とある社員の告発で明らかになっています。その内容は、社員の監視です。社内で基準を設けてそれにそぐわない人材を冷遇するという組織が存在していました。告発者はまさにその対象者でした。どのような基準だったのでしょうか。

・1 社内の労働基準に詳しく権利意識が強い
・2 社内で若手社員の中心的人材で、上層部への物言いが多い
・3 社外のサークル活動に熱心に参加していて若手社員の面倒見がいい

他にも様々な基準があり、こういった項目に当てはまった人材を「危険人物」として冷遇してきたのです。もちろん人事部にもこういった思想を持った社員がいますので、本来会社にとって貢献してくれる人材を冷遇することで社内の規律を正していたのです。

しかし、このような評価が存在している企業で新たな事業で成功するはずがありませんし、イエスマン中心の組織になってしまいます。そうした組織風土・制度設計に、優秀な若手社員ほど飽き飽きとしてしまい早期に流出(転職)していきます。

若手社員の面倒見がいい社員はリーダーシップがあるはずですが、マイナス評価にされてしまうのは納得がいかない人もいるでしょう。上層部への物言いが多い人は、問題意識が強く、行動力のある人材のはずです。第三者委員会の報告では「上司に逆らえない企業風土が存在」と断定されており、こうした環境ではまともな事業が立ちゆくわけがありません。

2:新入社員研修で社員を没個性化していた

東芝の新入社員研修では、「バカになれ」という方針があったことが、ジャーナリストによって明らかになっています。それは一種の洗脳で、社員の個性を無くして上の言うことには必ず従う人材育成をしていたということです。

例えば、朝の川に社歌を歌いながら入水させられたりしていた歴史があったようです。社員を東芝の上層部にとって都合のいいように最適化していたのです。そういった人材が自立した考え方でまともな仕事をすることが出来るとは思えません。

東芝が倒産寸前に追い込まれている原因の一つとしてアメリカの原子力発電企業をかなり不利な条件で買収していたことが挙げられます。条件を見れば明らかですが、かなり相手側に利益を与えるような買収条件だったようです。

新入社員の頃から洗脳され、実務能力よりもヨイショやゴマすりが上手い社員が厚遇し、社内新選組が優秀な人材を冷遇していれば、会社の利益よりも個人の損得を優先してしまう組織になってしまうと思います。そうしたカルチャーが浸透してしまえば、上述のように今回の買収での大きな損害につながったことも納得がいきます。

3:東芝を組織ぐるみで不正に走らせた魔の言葉「チャレンジ」

歴代3社長は、「チャレンジ」と称して過剰な業績改善を各事業部門に要求した。報告書はその経緯を詳細に記述している。社長が出席する会議で「チャレンジ」という形で示された数値目標は、達成が必須の額として位置づけられ、厳しい圧力で各事業部門にのしかかった。

引用:東芝を組織ぐるみで不正に走らせた魔の言葉「チャレンジ」

チャレンジと称して到底達成不可能な目標を各部門におしつけ、現場に無理難題と過剰なプレッシャーを与えたそうです。また支払サイト延長など取引先にも要求するようになり、立場が弱い企業は従わざるをえない状況だったそうです。最初から頑張るだけ無理と思わせる高すぎる目標は現場のモチベーションを下げるだけであり、こうした間違ったマネジメントが組織的な不正に繋がってしまいました。

まとめ

就職人気企業ランキングでも上位だった東芝が倒産寸前に追い込まれるとは一般人からは考えられませんでしたが、すでに利益を出していた半導体事業・医療事業を売却しています。今後は『レグザ』ブランドのテレビ事業も撤退する見込みが噂されています。東芝に残るのは社会インフラ事業のみになる目測です。

今の従業員を抱えたままでは上場廃止だけでなく倒産も現実味を浴びてしまいますので、今後は関連会社や子会社での事業撤退や大規模リストラが加速していくでしょう。私たちは東芝の失敗から正しいマネジメントと組織文化を学ばなければなりません。

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