「採用学」から学ぶ良い採用の基準に関する考察

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企業の人事であれば神戸大学大学院准教授の服部泰宏氏の著書として知られる「採用学」の存在をご存知の方も多いかと思います。採用を科学的な手法で再考し、採用活動を募集・選抜・定着に分別してまとめられたこの本の内容は、多くの採用担当者のバイブルとしても読まれてきました。今回はこの「採用学」にもまとめられている3つの良い採用の基準をご紹介させていただきます。

採用学 (新潮選書)

ポイント①将来の時点でより高い仕事成果をもとめることができる人材を獲得できているかどうか

採用面接をどのような基準で行い、候補者のどのようなポイントを見て採否を判断するのかは、各業界や企業によって基準が大きく異なります。それをあくまでも前提とした上で、服部氏は将来の【伸びしろの重要性】を本書の中で示唆しています。

人には、もともと「普遍的な能力」と「入社後に取得可能な能力」があり、採用活動においては前者をしっかりと見ることが大切だと書かれています。「普遍的な能力」というのは、その人がもともと性質的に持ち合わせている考え方や価値観、性格のような、無意識の中に存在している、変えようとしてもなかなか変わらない部分を指します。

「入社後に取得可能な能力」というのは、技術的なものを示し、意識することで変化することができるものを指します。様々な企業で重要視されている「コミュニケーション能力」や「業務スキル」は採用段階で重視するポイントではないと書かれています。採用売り手市場の昨今、入社時から即戦力として戦える人材のニーズは非常に高く、業界を問わず獲得競争が激化している、まさにレッドオーシャンです。

しかしながら、今後の成長を見越した「ダイヤの原石」を探し出す採用に関しては、まだまだどの企業も手探りの状況です。そして、後天的な能力が育つための「普遍的な能力」が備わっていれば、自社の教育研修によって入社後にスタッフを成長させることは大いに可能です。目先のことだけを考えるのではなく、中長期的な人材の定着を前提として企業成長に寄与する採用活動の考え方は、現在の採用市場状況から考えても非常に有効なものと言えるでしょう。

ポイント②人材が企業へとより強くコミットし、高い満足度を得て、中長期的に企業にとどまるかどうか

前述させていただいたように、「入社後に取得可能な能力」を入社したスタッフに求めるためには、中長期的な企業への定着や、入社したスタッフがその能力を取得したいと自ら思い、率先して能動的に行動することができる状況に導くことが必須条件です。

そのための取り組みを各企業が行えているかどうかによっても、スタッフの定着状況や成長の度合いは大きく変わってきます。顧客満足や売り上げを追求しすぎるがあまり、スタッフが疲弊していたり低いモチベーションで日々過ごしてしまっていないか、そもそも能力面での基準ばかりを重視しすぎてカルチャーフィットを軽視していたりしないか。採用活動において軽視されがちな「定着」という観点を、改めて見直す必要があるかもしれません。

退職する人材の欠員補充のために必要となる、採用のコストや工数を考えたときに、人材においては売り手市場の昨今、新しい人材を採用するよりも既存のスタッフが定着してくれる状況を作り出すほうが、メリットが多い可能性は十分にあります。一例として、教育研修機会の充実が挙げられます。筆者自身の経験上、中途採用面接の場で「仕事をして得られる嬉しいものは?」という質問をすると、金銭・休日休暇・評価といった項目に並んで、「自己成長」というワードをよく耳にします。

お金の部分や制度でまかなえる評価に注視し、力を入れている企業は多くあるかと思いますが、従業員満足において成長機会を段階的に提供できていると答えられる企業は、前者ほど多くないのが現状です。だからこそ、このポイント②において課題を感じている企業のご担当者には、ぜひ教育研修機会への意識の再確認を行っていただきたいと思います。

ポイント③組織を構成するメンバーに多様性が生じ、結果として組織全体が活性化しているかどうか

企業が成長を遂げるために、組織を構成している人材の活躍は必要不可欠だと言えます。採用活動においても、何らかの理由(欠員補充、事業拡大など)で入社したスタッフが、現状維持のためではなく組織がより活性化するほどのパフォーマンスをできることが理想だと、この本の中では書かれています。

採用担当者は、獲得したい人材に求める能力やスキルの基準だけを考えるのではなく、「この候補者が入社すれば、組織や企業にどのような好影響が及ぶのだろう?」という視点でも人材を見極めることで、守りの採用ではなく攻めの採用に繋げることができるようになるでしょう。対象者の入社後の活躍イメージが、組織にとって現状維持としか思えないのであれば、採用しないという選択をする決断も時には重要になってきます。

まとめ

採用は時代によっても市場が変化し、どんな状況でも通用する「黄金ルール」を各企業が見出すことは非常に難しい分野だと言えます。ただし、本質的に重要視すべき考え方や悩んだ際に立ち戻る価値観を持っていれば、ブレない基準で採用という業務と向き合うことができます。今回の考察が、そのための皆さまのヒントとなれば幸いです。

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