転職エージェントが人工知能に駆逐されない4つの理由

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HRテックという言葉をご存知でしょうか。人材業界においても転職エージェントのキャリアコンサルタントが担っていた採用企業と求職者のマッチングを人工知能(AI)が予想できるようになると度々話題になります。現役キャリアコンサルタントにとっては一抹の危機感を覚える人もいると思いますが、私は転職エージェント業界でAI分野が確立もしくは代替されるのは当分先であろうと考えています。その理由についてまとめました。

HRテックとは

HRテック(HR Tech)とはHuman Resource(ヒューマンリソース)× Technology(テクノロジー)を意味する造語のことで、直訳すると「人的資源の科学技術」になります。クラウド、ビッグデータ解析、人工知能(AI)などを利用し、採用支援・人材育成・評価処遇・組織管理などの人事関連業務を行う手法を言います。アメリカを中心とした海外ではHRテック市場が急速に成長しており、投資家やベンチャーキャピタルも注目している市場です。

国内のHRテック分野はクラウド系サービスが中心です。例えば株式会社ネオキャリア提供のクラウド型勤怠管理システム「jinjer (ジンジャー)」、株式会社SUSQUE提供のクラウド型人事・労務分析ツール「36(サブロク)」といったサービスがあります。

人工知能を搭載した介護ロボットが実用化されれば、深刻化している介護業界の人材不足が一気に解決できると期待されていますが、はたして人口知能がどこまで人間の役割を担えるかは疑問に感じる部分もあります。例えば転職エージェント業界でも人工知能は活躍できる余地はあるのでしょうか。

理由①人工知能がおこなった判断への信頼性

転職市場では人工知能によるレコメンド機能への期待が大きい。レコメンドとは推薦という意味で、人工知能が自分に合ったおススメの求人を紹介してくれることです。レコメンド精度について議論されることが多いですが、そもそも信頼性についても真剣に考えていきたいと思います。

先日ある方と話していた際に「人工知能が導き出した回答に納得できるのか?」という言葉が深く刺さりました。例えば深層学習(ディープラーニング)を用いて性格判断や能力診断をした上で「おススメの企業」を提示されても、自分の進みたい業種・職種・求める条件と違っていたら納得できるのか、どうするのかという意見です。「人工知能がそう判断したから」という回答で人生の判断を委ねることは出来るでしょうか。

人工知能のメリットとして人間の感情による主観的判断が入らないため、公平公正な判断が出来ると期待されていますが、機械の判断にどこまで正確性があり、どこまで信じるかは難しい部分です。転職は自分の人生を左右する大きな分岐点だけに機械の判断に頼りすぎていいのかは意見が分かれます。

理由②転職エージェントの存在価値と介在理由

転職エージェントの介在理由は書類選考の受かりやすい企業を紹介することや、採用されやすい候補者を紹介することではありません。組織に定着し活躍してくれる候補者を紹介し、企業と個人双方のマッチングをおこなうのが転職エージェントの介在価値です。これは簡単に人工知能が模倣できる仕事ではありません。

熟練したキャリアカウンセラーは募集企業のレジュメだけではわからない採用課題を把握し、求職者ですら気づかない自分自身の強みや大切にしている軸など経験則で理解し、エントリーシート添削や面接アドバイスをしてくれます。そのレベルにまで人工知能が予測演算・自動学習することが出来るのかという疑問もあります。

また未経験や異業種へのキャリアチェンジも企業と求職者との信頼関係から生まれることが多々あります。お互いの信頼関係があってこそ任せることができる仕事ですから、機械が代替できるとは想像しづらいのがキャリカウンセラーの存在価値です。

関連記事:人材紹介会社の価値・役割・特徴・メリット・デメリット

理由③マッチング精度における機械学習の問題点

人工知能がマッチング精度を高めるためには膨大なデータの蓄積が必要になってくるでしょう。人工知能に統計データから学習してもらうためには「採用された候補者が5年後、10年後、20年後に活躍できているか」「活躍している人間の因果関係はどこにあるか」といった超長期的視点での個人情報や人事評価データ収集が必要なはずです。

実用化レベルには最低でも数千社以上の企業協力と、データサイエンティストによる採用現場での高度な蓄積と分析が必要不可欠ですから現実的には実現不可能な方法です。募集企業の状況や求める人物像も変化しますし、内定実績だけであれば実現可能かもしれませんがミスマッチの可能性が排除できません。

精微なレコメンド求人を実行するためにはスキルマッチだけでなく候補者の詳細なプロフィール、適性検査や性格診断も必要になるため、機械学習にとても長い期間が必要とされます。また人柄やカルチャ―マッチという重要だが言語化しづらい不透明で複雑な要素が絡み合っている部分も機械学習にはハードルが高いように思えます。

理由④Amazonとは違う求められる双方向性

よく求人レコメンド機能はAmazonのレコメンド機能と比較されます。Amazonのレコメンド機能は非常に精微なため、同じように求人にも機械学習(マシンラーニング)で応用すればよいとする意見もありますが、人間を対象にすると桁違いに難しくなります。

求人レコメンド機能の難しい点は求職者側のニーズだけでなく、企業側ニーズにも合致しなければいけなく、双方向のマッチング精度が求められることです。アマゾンであれば一方通行のニーズを満たせば購入に至りますが、転職や就職の場合は両想いにならなければいけません。

レコメンド型転職サイトと呼ばれるサービスはすでにありますが、現在のところ書類選考の合格率程度しか機能がありません。ワガママな意見かもしれませんが書類合格率よりも内定率を知りたいのが求職者の本音ではないでしょうか。単純に「書類選考に受かりやすい企業」なら人工知能でなくとも、転職エージェントなら簡単にわかります。

まとめ

人材紹介会社ではAI分野が代替されるのは難しい理由をまとめましたが、一方で保有している求人票をただ紹介するだけの人材紹介会社は生き残るのが難しいでしょう。まだ国内のHRテック分野は手探り状態ですが、AIは採用を劇的に変革させてくれる可能性を秘めています。海外では急速に注目されているため、遅かれ早かれ日本にも本格的な波は絶対に来ると思われます。

新卒採用と中途採用どちらにおいてもミスマッチがなくならず、20代の早期離職が問題視されていますが、日々進歩するAI技術とうまく連動してミスマッチを減らし、誰もが活躍できる社会が実現できることに期待している。結局のところ、どう活用するかも人間次第なのだ。

参考URL:転職エージェントは人工知能(AI)に代替されてしまうのか?(末永雄大) – Y!ニュース
参考URL:人材紹介業の動向、大手・中小人材紹介会社の今後とは-ヘッドハンティングのジーニアス株式会社

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